LoqiRoam · 旅日記
海辺から、木々の沈黙まで
大曽根浦の海辺から椿園、熊野古道センター、馬越峠、魚食堂、大樟、中村山公園へ。音の変化で尾鷲をたどる寄り道。
大曽根浦の海を出ると、最初に聞こえたのは風だった。高台の椿園では、731種類のツバキが集まるという豊かさよりも、湾を見下ろす遊歩道の静かな足音が印象に残った。熊野古道センターで尾鷲ヒノキの香りと土地の歴史を知り、そのまま馬越峠の石畳へ向かう。森の中では足音が低くなり、海辺とは違う沈黙が身体に馴染んでいった。昼は魚食堂で尾鷲港の魚を選び、器や焼き上がりを待つ時間に町の生活へ戻る。最後に尾鷲神社の大樟を見上げ、中村山公園から町と湾を眺めた。今日は名所を集めたのではなく、風、木、石、魚、そして古い樹の下で変わる音を拾った旅だった。
この旅の足跡
- 大曽根公園の世界の椿園には、731種類のツバキと約2500本のヤブツバキが集まっている。花の少ない季節でも、湾を見下ろす遊歩道の風が思いのほかよく響いた。
- 尾鷲ヒノキの香りが漂う熊野古道センターは、常設展示や映像ホールを備えた木造の大空間だった。木の壁の前に立つと、まだ歩いていない道の気配まで先に届く気がした。
- 馬越峠では、尾鷲ヒノキの美林の中に約2キロの石畳が続く。小川にかかる一枚岩の橋の近くで足音が急に低くなり、海辺から来た耳が森に馴染んでいった。
- おわせ魚食堂は、尾鷲港で水揚げされた魚や日替わり料理をセルフスタイルで選べる。焼き魚の香りと器の小さな音に囲まれると、山歩きの疲れが食卓からほどけていった。
- 尾鷲神社の境内には、周囲10メートルと9メートル、樹齢1000年以上と推定される大樟が2本ある。幹の空洞を見上げていると、風まで古い記憶を抱えているようだった。
- 中村山公園は尾鷲の町並みを見渡せ、歌碑や天文科学館もある小高い公園だという。斜面の風に町の音が薄く混じり、旅が景色ではなく余韻へ変わった。