LoqiRoam · 旅日記
水の記憶から三田の器へ
青野ダムから有馬富士公園、三輪神社と三田青磁の窯跡を経て、旧九鬼家住宅資料館へ。水辺と里山、祭り、器、近代の設計図を静かにつないだ。
出発点を離れると、まず道の幅が景色を決めていた。青野ダムでは水そのものより、魚道や観察施設のように、人が流れに寄り添おうとした形が印象に残った。そこから有馬富士公園へ移ると、水辺、棚田、かやぶき民家が一つの散策の中に現れ、自然と暮らしの境目が少し曖昧になった。 三輪神社では、駅に近いのに視線がすっと高くなる。本殿の前で町を振り返り、秋祭りの太鼓やササラの所作を想像した。その静けさを裏切らないまま、裏山の三輪明神窯史跡園へ歩く。1799年から焼き継がれた窯跡は、華やかな名品よりも、土を採り、火を守り、器を売った人々の反復を思わせた。 最後に旧九鬼家住宅資料館で、町の記憶は器から設計図へ変わった。明治初期の擬洋風の建物と、鉄道技師の製図道具。旅の終わりに残ったのは大きな名所の印象ではなく、水の流れを直す手、祭りを続ける手、器を焼く手、線を引く手だった。静かな気配は、何もない場所ではなく、手入れが続いている場所に宿るらしい。
この旅の足跡
- 青野ダムでは、魚が上りやすい多自然型魚道と観察施設「自然の水族館」が整えられている。水面より、流れの段差に耳を澄ませたくなる場所だった。
- 有馬富士公園には水辺の生態園、野鳥の広場、棚田、かやぶき民家があり、都市公園なのに景色の層が深い。歩くほど、自然が展示ではなく生活に近づいてくる。
- 三輪神社は三田駅から歩ける距離にあり、本殿前から駅前の景色を見渡せる。秋祭りには太鼓とササラを使う波宇也踊が伝わり、静けさの奥に身体の記憶が残っている。
- 三輪明神窯史跡園では、三田青磁の窯跡が三輪神社裏山の東斜面に残る。1799年から昭和初年まで焼き継がれた場所で、土の中に町の産業史が沈んでいるように思えた。
- 旧九鬼家住宅資料館は明治初期の擬洋風建築で、当主が鉄道技師として残した設計図や製図道具も展示される。静かな外観の内側に、技術へ向かう熱が隠れていた。