LoqiRoam · 旅日記

水と木陰のあいだで

深草の竹林と石仏から伏見の酒蔵と名水へ、影の質感が変わる道を歩いた。

JR藤森を出たとき、目的地は決めていなかった。藤森神社へ入ると、勝運と馬の信仰のそばに「不二の水」があり、強い願いの場所にも静かな水音があることに気づいた。深草の瑞光寺では竹の影が街の音を細くし、石峰寺では若冲ゆかりの五百羅漢が木陰の奥に沈んでいた。そこから伏見稲荷の石段へ進むと、朱の鳥居は華やかさよりも山の斜面に続く信仰の深さを見せた。やがて伏見へ下り、月桂冠大倉記念館の黒い酒蔵と濠川を眺める。最後に御香宮神社で御香水を見て、影とは光の不在ではなく、暮らしが長くそこにあった証なのだと思った。

この旅の足跡

  1. 藤森神社には勝運と馬の信仰があり、地下約100メートルの水を「不二の水」と呼ぶ。強い願いの社なのに、手水の馬影はどこか穏やかだった。
  2. 瑞光寺は深草にある日蓮宗の寺で、竹を取り入れた数寄屋意匠が残る。門をくぐると、近いはずの街の音が薄まり、竹の影だけが静かに動いていた。
  3. 石峰寺の裏山には、伊藤若冲が下絵を描いたと伝わる五百羅漢が残る。竹林の中の石像は表情が一つずつ違い、誰の影を見ているのか分からなくなる。
  4. 伏見稲荷大社の千本鳥居は稲荷山の斜面へ続き、鳥居の隙間には祠や石段が重なる。朱の回廊を歩くほど、名所より山の信仰に近く感じた。
  5. 月桂冠大倉記念館の向かいには1906年建造の内蔵酒造場があり、濠川沿いに酒蔵の景観をつくる。黒い板塀の影から、伏見の水が産業になった時間を想像した。
  6. 御香宮神社の表門と極彩色の本殿は桃山期の建築で、境内には御香水が湧く。華やかな門を抜けた先で、水を汲む人の動きが木陰に小さな波をつくっていた。
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