LoqiRoam · 旅日記
水音から紅柄の町へ
水音のある洞窟から新見の町を経て、祭礼の記憶と吹屋のベンガラ文化へ進む旅。
野馳を出たとき、旅はまだ小さな駅のまわりに収まっていた。けれど高梁川の流れを追ううち、井倉洞の入口からは峡谷の水音が返ってきた。洞内の暗さを抜けて新見の町へ入り、美術館の窓辺で抹茶を飲む。いったん静かに座ったことで、城山公園の高台から見る町の広がりがよく分かった。船川八幡宮では、いま聞こえる音より、秋の行列に残る声を想像した。そこから山道を越えて吹屋へ向かうと、景色は水の灰色からベンガラの赤へ変わった。古い町並みの奥にある蔵や仕事場を思うと、赤はただの色ではなく、掘る音、焼く音、暮らしの音の積み重ねだったのだと気づく。最後は少し遠回りをしたぶん、耳の中にいくつもの土地が残った。
この旅の足跡
- 井倉洞の入口に立つと、石灰岩の大きな峡谷から水音が返ってきた。全長1200メートルの洞内に約50メートルの滝があると知り、暗がりへ進む前から地形の迫力に少し圧倒された。
- 新見美術館のCafé庄は、窓から新見市街地を眺めながら抹茶を飲める場所。展示を見る前に、町のざわめきが少し遠くなる席で休めるのが意外にうれしかった。
- 城山公園は新見駅から歩ける高台で、約300本の桜がある市民の憩いの場。花の季節でなくても、駅の音を背中にして町を見下ろすと、旅が地図から風景に変わる感じがした。
- 船川八幡宮では、秋季大祭の御神幸武器行列が300年の伝統として伝わる。境内は今は静かでも、青竹を持つ先払いと行列の声を想像すると、石段の奥に祭りの厚みが残っている気がした。
- 吹屋ふるさと村は標高約550メートルの山村で、ベンガラ色に統一された町並みが続く。歩くほど景色の赤が濃くなり、銅山と商いで栄えた場所の生活音を思い浮かべた。
- 吹屋の町並みの中ほどには旧片山家住宅があり、主屋だけでなくベンガラ製造に関わる蔵や仕事場も残る。表の赤い景色の裏側に、手仕事の音が隠れていたのだと思う。