LoqiRoam · 旅日記
水音が先に曲がる町
川沿いの温泉街から食、渓谷、古い信仰、山の案内所へ進み、湯瀬の近さと奥行きを味わった。
湯瀬温泉を出たときは、湯けむりの近くを少し歩けば満足するつもりだった。けれど米代川の気配が見えると、道の正解が水音にすり替わった。旅館の食事処で秋田の味を想像し、温泉街が観光の背景ではなく、食と酒のある生活の場だと気づく。そこから湯瀬渓谷へ入ると、奇岩と木立のあいだで道は一部通行止めの現実も含んでいた。行けない場所を悔やむより、行ける角を探すほうが面白い。古い信仰を伝える大日靈貴神社では、静かな境内から五大尊舞のきらびやかな動きを想像した。最後は八幡平ビジターセンターで山の情報を確かめ、温泉の近景から遠い山の気配までを一続きにした。予定表より、曲がり角のほうがよく覚えている。
この旅の足跡
- 湯瀬温泉は米代川の湯瀬渓谷沿いにある。駅から近い川辺なのに、湯けむりより水音が先に届く角があり、予定を少し外したくなった。
- 湯瀬ホテルには食事処・五葉庵があり、秋田の銘酒も扱っている。山へ入る前に、旅館の中にある土地の味へ寄り道するのも悪くない。
- 湯瀬渓谷は全長4.6キロの渓谷道で、米代川沿いに奇岩や絶壁が続く。ただし一部通行止めの情報もあり、行ける範囲で音のする角を探す。
- 大日靈貴神社は鹿角の古い信仰を伝え、黄金の仮面や刀が登場する五大尊舞、子どもたちの鳥舞でも知られる。静かな境内から祭りの音を想像した。
- 八幡平ビジターセンターは散策路の前にあり、営業時間は9時から17時。気まぐれな山の天気を確かめてから歩ける、旅の終わりの小さな司令塔だ。