LoqiRoam · 旅日記
影は地上より深く
井倉洞から新見の文化景観を経て、羅生門と満奇洞、吹屋の木造校舎へ影の濃淡をたどった。
坂根を出ると、高梁川沿いの井倉洞が最初に光を飲み込んだ。岩の内側へ消える水の反射を見て、影は暗さではなく、何かがまだ続いているという印なのかもしれないと思う。新見美術館では大窓の向こうに庭園と町と列車が重なり、地底から戻った目に、遠景の明るさが少しまぶしかった。御殿町の細道では、器や神棚を伝える古い建物の前で、暮らしの時間が観光の時間よりゆっくり流れていた。そこから草間台へ向かい、羅生門の巨大な石門と冷気に立ち止まる。さらに満奇洞へ入ると、約15度の空気と色を変える照明が、鍾乳石の影を静かにほどいていった。最後は吹屋へ。赤い町並みの先に残る旧吹屋小学校の廊下に、夕方の光が長く伸びている。地上へ戻ったはずなのに、影だけがまだ、あの洞窟の奥を歩いていた。
この旅の足跡
- 高梁川のそばで、井倉洞の入口は岩壁にぽっかり口を開けていた。水の反射が暗がりへ消えていくのを見て、地上の光にも底があるのかと思った。
- 新見美術館の大窓から、枯山水庭園と市街地、伯備線の列車まで一度に見渡せる。展示室の静けさと、遠くを走る車輪の気配が不思議に同居していた。
- 御殿町には江戸から大正へ続く器や神棚を伝える建物が残る。表通りだけでは見えない時間が、細い路地の影の奥でまだ誰かを待っているようだった。
- 羅生門は高さ約40メートルの天然石門で、洞口から低温多湿の空気が吹き出す。遊歩道の先で冷気に触れると、夏の光まで薄い膜をまとったように見えた。
- 満奇洞の内部は年間を通じて約15度前後で、LED照明が鍾乳石の凹凸を静かに浮かび上がらせる。色のついた光なのに、足元の影はかえって深く感じられた。
- 旧吹屋小学校は1900年前後に建てられた木造校舎で、長い廊下に午後の光が斜めに落ちる。赤い町並みを見たあとでは、教室の影まで鉱山の記憶を抱えているようだった。