LoqiRoam · 旅日記
影の長さで歩く、西条の午後
寺家から西条へ移動し、酒蔵、神社、高台、食、水辺をつないで、影の形が変わる午後を歩いた。
寺家を出ると、山あいの気配は列車の窓の向こうへ静かにほどけていった。西条では白壁となまこ壁、赤煉瓦の煙突がつくる細い影を追い、酒蔵の一号蔵を使った見学室で、町の産業が積み重ねてきた時間に触れた。御建神社へ回ると、通りの賑わいは木々の陰に吸い込まれ、石造物のそばで歩く速度が変わる。やがて鏡山の展望台から町を見下ろすと、さっきまで大きく見えていた煙突や屋根が、光の中の小さな線になった。路地裏の古民家カフェで、広島の牡蠣を日本酒で蒸した料理の湯気に包まれ、旅の輪郭をいったん近くへ戻す。最後に三永水源地へ向かう。水面に映る空は足元の影より不確かで、風が吹くたび別の形になった。眺めていたのは影の静けさだったのに、帰る頃には、それを揺らしているものの方が気になっていた。
この旅の足跡
- 西条酒蔵通りは、白壁となまこ壁の間に赤い煙突が立ち、午後の影を細く切っていた。酒の町なのに、最初に耳へ届いたのは静かな足音だった。
- 賀茂鶴の見学室直売所は、登録有形文化財の一号蔵を使っている。展示を見ていると、暗い蔵の奥にだけ残る時間が、酒の香りより長く漂っていた。
- 御建神社は西条の氏神として町を見守り、酒造りとの縁も深い。石造物の影を見ていると、賑わう酒蔵通りのすぐ隣に別の時間が眠っている気がした。
- 鏡山公園の龍王山展望台からは西条の町並みを一望できる。桜の森を抜けた先で、さっきまで追っていた煙突が小さな影の列になった。
- cafe Trecasaは酒蔵の並ぶ街の路地裏にある古民家カフェで、広島産牡蠣を西条の日本酒で蒸す料理もある。湯気が午後の影を柔らかくした。
- 三永水源地は水を蓄える場所で、開放日には水辺の景観を歩ける。夕方の水面は空を映し、影が地面ではなく揺れながら残っていた。