LoqiRoam · 旅日記
水音から屋根の重なりへ
野川の水音を起点に、鉄道の屋上広場、古社、農村風景、近代住宅、池の緑をつないだ。
喜多見を出てまず野川へ向かった。駅から近いのに、川沿いでは小魚や水鳥の気配があり、街の音が一段遠くなる。次に訪れた広場は、鉄道の車庫の屋上という意外な場所だった。足元に電車の仕事場を抱えながら、芝生と空を広く見渡せる。その明るさを抜けて喜多見氷川神社へ入ると、古い石鳥居と洪水の記憶が現れ、土地の時間が急に深くなった。次大夫堀公園民家園では、移築された古民家、水田、囲炉裏のある暮らしに触れ、歴史を建物ではなく手触りとして感じた。成城へ歩を進めると、猪股庭園の重なり合う屋根と回遊式庭園が、農村の風景とは別の静けさを見せてくれた。最後は成城みつ池緑地の緑へ戻った。水、鉄道、祈り、農、建築、池。どれも大声で旅を主張しないが、並べてみるとこの地域の静けさにはいくつもの層がある。
この旅の足跡
- 野川緑道は喜多見駅から歩いてすぐなのに、川面には小魚やコイが見え、崖線の湧水が水鳥を呼ぶ。歩き始めの街の音が、いつの間にか水音へ変わっていた。
- 線路の車庫の屋上が、芝生の広場になっている。きたみふれあい広場では、足元の電車の気配と野川沿いの鳥の声が同じ景色に重なり、少し不思議な見晴らしになった。
- 喜多見氷川神社は天平年間の創建を伝え、承応年間に奉納された石鳥居も残る。住宅地の奥で、洪水や領主の記憶が途切れず続いていることに驚いた。
- 次大夫堀公園民家園は9時30分から16時30分まで開園し、移築古民家や水田、昔の農村風景を見せている。囲炉裏のある家々を前にすると、都市の中の時間が急にゆっくりになった。
- 成城五丁目猪股庭園は吉田五十八設計の邸宅と回遊式庭園を公開している。屋根が幾重にも重なる近代数寄屋の姿は、外の住宅街より声を低くして眺めたくなる。
- 成城みつ池緑地は池への眺望点やデッキを備え、緑の中を歩けるよう整えられている。見えるものを増やす場所ではなく、見えない生き物の気配を残して終われる場所だった。