LoqiRoam · 旅日記
音の行き先を決めないまま、本庄を歩いた
本庄の和菓子、絹産業の煉瓦倉庫、宿場の門、公園の水音、純喫茶を音の変化でつないだ。
本庄に着いたとき、旅の目的はまだ輪郭を持っていなかった。最初に和菓子店の包み紙と季節の菓子を眺めると、歩き出すための小さな音が生まれた。赤煉瓦の倉庫では、繭を収めていた建物の壁に、絹の町が忙しく動いていた時間を重ねた。田村本陣の門は、門だけで道の記憶を抱えていて、そこを通った人々の足音を想像させた。歴史の密度が高くなったところで若泉運動公園へ折れると、噴水とせせらぎが旅の速度をほどいてくれた。最後に純喫茶のコーヒーを飲み、カップの置かれる音を聞いてから駅へ戻った。名所を集めたというより、音の大きさが変わるたびに道を選んだ一日だった。帰るころには、本庄は地図上の点ではなく、商いと記憶と水音がゆっくり重なる場所になっていた。
この旅の足跡
- 店先に並ぶ季節の練切を見ていたら、包み紙の音まで旅の合図に聞こえた。本庄駅から徒歩8分の和菓子店で、昔ながらの団子や素朴な菓子に出会える。
- 赤煉瓦の壁の前では、車の音が少し柔らかくなった。旧本庄商業銀行煉瓦倉庫は繭を収めた明治29年の倉庫で、今は展示と交流の場になっている。古い梁の下に、絹の町の忙しさを想像した。
- 門だけが道のほうを向いて残っているのが不思議だった。田村本陣の門は本庄宿の北本陣に関わる文化財で、旧本庄警察署の前へ移築されている。人の出入りを見送った門が、今も通りを見ている。
- 暑さの中でも、若泉運動公園のせせらぎ広場には水の音があった。夏季はじゃぶじゃぶ池や噴水が使えると知り、街歩きの速度を一度落とした。見えない風まで、水面のきらめきから伝わってきた。
- コーヒー豆の香りが、さっきの水音を街の時間へ戻してくれた。コスタリカは本庄で初めての純喫茶として開業し、60年以上コーヒーを提供してきたという。カップの置かれる音が、妙に頼もしかった。
- 帰り道、駅の音は出発したときより近く聞こえた。駅周辺には宿場町の建物と新しいカフェや商店が並び、歩くたびに昔と今の響きが重なる。名所より、生活の音を持ち帰りたくなった。