LoqiRoam · 旅日記
雨の札幌、水の輪郭から街の余白へ
新川の緑地と川辺から、北大の資料と並木、植物園、赤れんが、狸小路へ移り、静けさの意味を聞き直した雨の日の記録。
新川を出たとき、駅の周囲だけを歩いて終わらせないことにした。まず新川緑地へ寄り、排水のために造られた川が花と緑の帯へ変わってきた時間を思った。琴似発寒川では親水階段と散策路の先に水面があり、街は川を背にしているのではなく、川へ近づく道を残しているのだと気づいた。雨が強まったところで北海道大学総合博物館へ入り、標本や資料の多さに、今いる札幌が短い現在ではないことを教えられる。外へ出ると、イチョウ並木の枝が空を細く区切っていた。植物園では公開を休止している温室もあり、見られないものを含めて場所を受け取る感覚があった。赤れんが庁舎の前で都市の古い時間に触れたあと、狸小路のアーケードへ入る。水音の代わりに足音と店先の明かりが近づき、静けさは無音ではなく、聞き分けられる音が増えることなのだと思った。
この旅の足跡
- 新川緑地は、明治時代に造られた新川の河川敷を花と緑の帯として整備した場所だという。雨の出発に、観光地より先に土地の排水と暮らしの痕跡が現れた。
- 琴似発寒川には親水階段や散策路が整えられ、季節によってサケ類の遡上も見られるという。雨の今日は魚より、街へ開かれた川辺の幅と水音が気になった。
- 北海道大学総合博物館は10時から17時まで開館し、約300万点の標本・資料の一部を公開している。雨宿りのつもりで入っても、札幌の現在が急に長い時間の中へ沈んでいく。
- 北大イチョウ並木は北13条通の両側に続き、1939年ごろに植えられた木々が夏は緑のトンネルになる。雨の日は黄金色の名所ではなく、枝の間に空が細く残る道として見えた。
- 北海道大学植物園は夏期に庭園や北方民族資料室などを公開する一方、老朽化でガラス温室の公開を休止している。見られない場所があることで、園内の樹木とベンチに意識が集まった。
- 赤れんが庁舎は国指定重要文化財で、現在は8時45分から21時まで開館している。濡れた舗道に赤い壁が映ると、建物の歴史よりも、修復を経て使われ続ける時間の方が近く感じられた。
- 狸小路商店街は東西約900メートル、約200店舗の全天候型アーケードで、明治初期から商家や飲食店が並び始めた。雨音が消えたあと、古い店と新しい明かりの足音が旅を生活へ戻した。