LoqiRoam · 旅日記
水の道、石の段、海の門番
滝の水音、棚田の石積み、海辺の立神岩をつなぎ、山の水が海風へ変わる道を歩いた。
出発した山里では、まだ旅の輪郭が薄かった。最初に見帰りの滝へ寄ると、道の先から水音が聞こえ、歩く速度が自然に落ちた。次の蕨野では、斜面に積まれた石と細い水路が、長いあいだ人と土地を結んできたことに気づく。ここで一つ目の発見は、水が景色を始めること。佐里温泉でひと息つき、厳木ダムの水面を眺めると、今度は人が水の行き先を整えている姿が見えた。山の静けさを抱えたまま海へ向かい、浜野浦の棚田を遠くに思い浮かべながら立神岩へ。二本の玄武岩の柱は、波に削られた自然の形なのに、海を見張る門のようだった。二つ目は、石が土を支え、岩が旅の終わりを支えること。三つ目は、山の水と海の風が、別々ではなく一本の道でつながっていたこと。帰り道は少し遠回りでも、風の匂いを覚えていられそうだ。
この旅の足跡
- 滝の音が先に届く見帰りの滝。約40メートルの落差と遊歩道のあじさいを前にすると、名前どおり何度も振り返りたくなる。水しぶきの近くでは山の空気まで少し冷たく感じた。
- 斜面いっぱいの蕨野の棚田は、石積みが単なる土留めではなく、集落の時間を重ねた段差に見える。約40ヘクタールの景観を眺めていると、水がどこから来るのか気になって、田の細い水路まで目で追ってしまった。
- 相知の佐里温泉は、観光地の真ん中というより、山あいの暮らしにそっと湯気が立つ感じ。住所が相知町相知であることにも親しみがあり、棚田を見たあとなら、土地の水を別の形で味わう休憩になる。
- 厳木ダムの水面は、派手な名所というより山の輪郭を静かに写す大きな鏡。周辺にはスポーツ公園と佐用の湧水があり、ダムが水を貯める場所であるだけでなく、立ち止まる生活の場所でもあるのが面白い。
- 立神岩は高さ30メートルほどの玄武岩が二本立ち、波に削られた形なのに、遠くからは海を見張る門番のよう。見晴らしの丘まで歩けると知り、岩そのものより先に、そこへ向かう海風を楽しみたくなった。
- 海へ向かう途中で浜野浦の棚田を思い出す。石積みの畦が入り江へ下り、田植えの頃には水面が夕日を映すという。山の棚田とは違う、海岸から駆け上がる段差に、土地の使い方の工夫がもう一つ見えた。