LoqiRoam · 旅日記
水面の向こうに、町の時間があった
商店街のカフェから美術館、古社、チーズ工房、水辺へ。町の静けさが、暮らしとの距離として残った。
三良坂駅を出たとき、旅はまだ輪郭を持っていなかった。商店街のカフェで、古い町並みに新しい店が静かに根を張っているのを見て、まずは土地の現在を受け取った。三良坂平和美術館では、平和・人権・文化という大きな言葉が、町の規模に対して少しも大げさに感じられなかった。作品の前に立つ時間が、駅前の朝とは違う深さを持っていたからだ。八幡神社へ向かうと、由緒の古さよりも、木立が音を吸っていく感覚が残った。途中で三良坂フロマージュの仕事に触れ、土地は景色だけでなく、家畜を育て、味に変え、次へ渡す手の動きとして続いていると感じた。最後に灰塚ダムへ出ると、町の細部が水面の広がりにほどけた。人工の湖なのに、風が止まると自然の地形のように静かだった。静けさとは音がないことではなく、遠くの暮らしまで含めて眺められる距離なのだと思う。
この旅の足跡
- 駅を出て商店街へ向かうと、Mirasaka Coffeeの黒い外観が古い町並みに馴染んでいた。地元の形を描いたソーサーまであり、店の静かな熱意に驚いた。
- 三良坂平和美術館は平和・人権・文化を掲げ、柿手春三の作品を常設展示している。小さな町で、静かなテーマが長く守られていることが印象に残った。
- 八幡神社の由緒は1194年に始まり、応永十二年の銘を持つ御神像も伝わる。木立の中では車の音が薄れ、古さが音として残っているようだった。
- 三良坂フロマージュは山地酪農を目指して2004年に創業した工房。チーズを味わうと、景色だけでなく、土地を手で継ぐ仕事も旅の一部だと気づいた。
- 灰塚ダムの湖面は人工の水景なのに、風が弱まると自然の地形のような静けさを見せる。人が造った広がりと野生の気配の境目が気になった。