LoqiRoam · 旅日記
光の裏側にある深草
深草の社寺をつなぎ、木陰、鳥居、石仏、岩の信仰へと影の質が変わる道を歩いた。
JR藤森を出ると、まず藤森神社の参道で足がゆるんだ。社寺を訪ねる旅のつもりだったのに、最初に見えたのは建物ではなく、馬場を横切る木の影だった。そこから伏見稲荷へ向かい、朱い鳥居の反復に身体を預ける。明るい色が続くほど、鳥居の内側の暗さが深くなる。山を下りて石峰寺へ折れると、景色の主役は石と竹に変わった。若冲ゆかりの五百羅漢は、顔を見つけようとするほど木漏れ日の中へほどけていく。瑞光寺では人の名を刻んだ時間に触れ、大岩神社では岩と鳥居の線が重なる山道を歩いた。最後にもう一度伏見稲荷の境内へ戻ると、出発前には強すぎた朱色が、長い影を抱えて静かに見えた。今日は光を探したのではなく、光が場所に残していく余白を歩いたのだと思う。
この旅の足跡
- 伏見稲荷の鳥居は、山を巡る約4キロの道に連なっている。朱色は強いはずなのに、鳥居の内側では光が細い帯になる。人の流れが途切れた瞬間だけ、山の影が戻ってきた。
- 藤森神社の南参道では、馬場の両側に木陰が長く伸びていた。紫陽花の名所として知られる社なのに、私が立ち止まったのは、拝殿へ向かう道を横切る細い影だった。
- 石峰寺の裏山には、伊藤若冲が下絵を描いたと伝わる五百羅漢が残る。竹林の中の石像は、顔を探すほど輪郭がほどけ、木漏れ日が一体ずつ別の表情をつくっていた。
- 瑞光寺は深草の元政庵として知られ、江戸初期の日蓮宗僧・元政上人ゆかりの寺だという。門前の明るさより、草山と呼ばれた土地の名残を思わせる奥の暗がりが気になった。
- 大岩神社は大岩・小岩を御神体とする古い信仰の社で、鳥居には堂本印象の意匠がある。山道の先で、人工的な線と岩の不規則な影が同じ画面に入るのが不思議だった。
- 伏見稲荷大社は閉門せず参拝でき、本殿の背後の稲荷山を巡るお山めぐりも案内されている。戻ってきた境内では、朝に見た朱が夕方の長い影を受け、別の色に見えた。