LoqiRoam · 旅日記

川風から歌枕へ、南へ曲がる

植田の街角から鮫川、海、勿来の関へ。寄り道で景色の温度を変えながら、現在の町と古い歌枕をつないだ。

植田では駅前を目的地にせず、昔の台町通りが本町へ伸びていたという話を手がかりに歩き始めた。東田町のカフェで手作りの甘いものに寄り道すると、旅の速度がいったん町の生活へ戻る。そこから八幡台の神社へ上がり、大きな木の下で商店街の音を遠ざけた。次の曲がり角では坂を下り、鮫川河口の芝生と散策路へ。川なのに海の匂いが混じるのが面白い。さらに勿来海岸で水平線に出たあと、今度は勿来の関公園の木立へ入り、視界を広げる旅から記憶の奥へ入る旅へ切り替えた。最後に文学歴史館で和歌と仮想復元された宿場町に触れると、今日の川風や海風まで、昔の誰かが言葉にしようとした景色の一部に思えてきた。最初から順路を決めていたら、この転換は起きなかったと思う。

この旅の足跡

  1. 駅のすぐ先で、植田の商業地は明治の駅開設を境に育ったらしい。台町通りが本町へつなぐ道だったと知ると、何気ない角にも昔の人の流れが見えてくる。
  2. プリンアラモードまで手作りする老舗カフェが、駅から徒歩圏に残っている。懐かしい店内で休むと、旅は観光地へ急ぐより先に、町の時間へ入り込める気がした。
  3. 八幡台の植田八幡神社には、保存樹に指定された大きなアカガシとケヤキがある。境内の静けさは、さっきまでの商店街の音を少しだけ遠くしてくれた。
  4. 鮫川河口の河川敷公園は、芝生広場と約1kmの散策路を備える。川なのに海の気配が混じり、植田の街が水辺にほどけていく感じがした。
  5. 勿来海岸へ出ると、川沿いの緑から急に太平洋の水平線へ変わる。海風は少し強かったが、その唐突さが今回いちばん気まぐれでよかった。
  6. 勿来の関公園は、古い関所の記憶と樹林の遊歩道が同居する場所。海を見た後に木立へ入ると、景色が横に広がる旅から、奥へ沈む旅に変わった。
  7. 勿来関文学歴史館では、和歌の世界を音と映像で紹介し、江戸時代の宿場町も仮想復元している。最後に来ると、今日見た川や海まで歌の背景に見えてくる。
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