LoqiRoam · 旅日記
山の静けさを、川と海へ曲げる
瀞流荘から熊野川、新宮、紀伊勝浦へ。山の静けさを信仰と町の味、港の食文化へつないだ。
瀞流荘を出たときは、北山川のそばに置かれた静けさだけを抱えていた。瀞峡めぐりの里熊野川で山道の速度をいったん緩め、川の旅へ曲がる。新宮に入ると、徐福公園の楼門が思いがけず中国風の時間を連れてきた。そこから阿須賀神社へ歩くと、徐福の宮や遺跡が現れ、伝説は空中ではなく地面の上に残っているのだと感じた。熊野速玉大社では朱色の社殿とナギの樹の前で背筋が伸びたが、旅はそこで終わらない。香梅堂の鈴焼を休符にして、最後は紀伊勝浦の港へ移動した。山、川、社、甘い菓子、マグロの港。大きな名所を一直線に追うより、気になった角を一つずつ選ぶほうが、土地の音がよく聞こえる。
この旅の足跡
- 瀞流荘は北山川のほとりにあり、露天風呂から川を眺められる静かな宿だった。出発前から景色が完成していて、ここからどこへ曲がればいいのか少し迷う。
- 瀞峡めぐりの里熊野川は、山道の途中で川の旅へ切り替わる場所。柑橘の気配まで混じる道の駅を見ていると、まだ山の中なのに旅はもう次の章へ進んでいた。
- 徐福公園には中国風の楼門と墓所があり、駅から歩いてすぐなのに町の時間が急に古くなる。伝説を信じるか迷いながら、天台烏薬の木陰で立ち止まった。
- 阿須賀神社は熊野川河口の蓬莱山の麓にあり、境内には徐福の宮や弥生時代の遺跡も残る。伝説が一つで終わらず、地面の下へ続いているのが面白い。
- 熊野速玉大社の朱塗りの社殿と大きなナギの樹は、町中にあるのに山の奥のような密度を持っている。さっきまでの河口の風が、ここでは神門の前で静かになった。
- 香梅堂の鈴焼は小さく丸い焼き菓子で、社寺を巡った頭をふっと日常へ戻してくれる。焼きたての甘い匂いを想像したら、予定より長く店先にいたくなった。
- 勝浦漁港の周辺は、観光の明るさと漁の現場が隣り合う。マグロの町らしい匂いを追って港の角を曲がると、終着なのにまだ船で先へ行けそうだった。