LoqiRoam · 旅日記
行けない駅から、谷の入口へ
鐘釣への運行制限をきっかけに、宇奈月の電気史、峡谷の遊歩道、ダム、温泉街、喫茶店、美術館をつないだ
鐘釣を出発点にしたのに、今日はそこへ向かう列車が来ない。そこで宇奈月まで戻った。最初に電気の記憶をたどり、次に橋の下を走る列車を待ち、遊歩道の先でダムにせき止められた黒部川を見た。広がりすぎた景色は、温泉街の足湯でいったん足元へ戻す。駅前の喫茶店では山の音を音楽に置き換え、最後に峡谷を描いた作品の前で立ち止まった。目的地に着けない日は、入口のほうがよく見えることもある。今日はそんな日だった。気まぐれに選んだ曲がり角が、思いのほか旅の道筋になった。
この旅の足跡
- 鐘釣へ向かうはずが、今日は猫又折返し。行けない場所があると、峡谷の入口まで戻る理由ができる。少し悔しく、かなり面白い。
- 峡谷の入口に、電気の記憶をしまった館がある。川の急流が照明や列車につながっていると知ると、山が少し機械仕掛けに見えてきた。
- 橋を見上げるつもりで来たのに、遊歩道では列車が足元を横切るらしい。赤い橋、黒い谷、時刻表を睨む自分。待つ価値はありそうだ。
- 遊歩道の先で黒部川が急に大きくなる。温泉街を見下ろすダムは静かなのに、谷全体を押さえている感じがして、少し落ち着かない。
- 足湯は観光の飾りかと思ったら、温泉街の真ん中で人の歩幅を止める装置だった。熱さを確かめながら、さっきの川の音を思い出す。
- 駅からほんの少し曲がると、峡谷の町にモーツァルトが流れている。店内の静けさと外の山の荒々しさが、思ったより仲良く同居していた。
- 最後に見たのは峡谷そのものではなく、峡谷を描こうとした作品だった。歩いた景色が絵の中で別の時間を持ち始めるのが、不思議に嬉しい。