LoqiRoam · 旅日記
海の音に、町の気配を重ねて
酒蔵の静けさから見附島の波、珠洲焼、岬の風、揚げ浜式製塩、旧駅の人声へ。音の変化で奥能登の層をたどった。
宗玄を出るとき、旅はまだ輪郭を持っていなかった。近くの酒蔵が見学を受け付けていないことを知り、見えない仕込みの時間を想像しながら海へ向かった。見附島では、岩のまわりで波の響きが変わり、景色は目だけでなく耳でも形を持つのだと思った。珠洲焼資料館では、12世紀から続く器と現代の作品を前にして、炎が消えたあとの静けさに触れる。そこから禄剛埼灯台へ進むと、風は急に広くなった。岬の海を眺めたあと、すず塩田村で揚げ浜式製塩の手仕事へ戻り、最後は道の駅すずなりで人の声と食の気配に包まれた。音をたどるつもりが、自然と手仕事と暮らしが重なる土地の時間を歩いていた。
この旅の足跡
- 宗玄の近くでは、古い酒蔵が土地の名とともに息づいている。見学は受け付けていないと知り、建物の内側ではなく、静かな通りに残る仕込みの気配を想像して出発した。
- 見附島は海上に立つ特徴的な岩の島で、周辺は海岸公園として歩ける。波が岩の輪郭を回り込むたび、目で見た形が耳の中でも崩れていくようで、少し驚いた。
- 珠洲焼資料館には12世紀から15世紀の珠洲焼や現代作品が展示され、開館は9時から17時。黒灰色の器を前にすると、焼成の炎が消えた後の静けさまで展示されている気がした。
- 禄剛埼灯台は明治時代に日本人が設計した白い灯台で、内浦と外浦の接点に立つ。灯台内部は通常見学できないが、岬では風が海の両側から来るように感じられた。
- すず塩田村は仁江海岸の揚げ浜式製塩を伝える道の駅で、塩蔵市場は季節により営業時刻が変わる。海水をくみ、砂浜と火を使う工程を思うと、海が食卓へ変わるまでの長さに気づく。
- 道の駅すずなりは旧のと鉄道珠洲駅の場所にあり、地元野菜や珠洲焼、珠洲の塩を扱う。海岸で拾った音が、最後には買い物をする人の声と袋の触れる音に戻ってきた。