LoqiRoam · 旅日記
水音の町で、足音の行き先を変える
湧水、川、生活水路、踊り、城の坂、工房の手仕事をつなぎ、音の大きさではなく距離の変化をたどった。
徳永を出ると、山あいの静けさはすぐには消えず、耳の奥に薄く残った。南へ進んで宗祇水に着くと、湧水は名所として立っているのに、音は驚くほど控えめだった。その小ささを確かめるように吉田川親水遊歩道へ向かうと、今度は流れの幅が一気に広がる。川辺でしばらく休み、いがわこみちへ入ると、音はまた家々の近くへ戻った。旧庁舎記念館では、古い建物の中に休憩と踊りの気配があり、博覧館では水、歴史、わざ、郡上おどりがひとつの町の記憶として並んでいた。最後に郡上八幡城へ登ると、足音が坂の勾配に合わせて変わり、さっきまでの水音を遠くから眺めるような気分になった。旅の終わりは食品サンプルの工房へ。蝋から料理の形が生まれる想像に耳を澄ませながら、場所を移動するたび、音そのものより音との距離が変わっていたのだと気づいた。
この旅の足跡
- 宗祇水は、連歌師の名と古今伝授の故事を抱く湧水で、石段のそばから静かに水が立ち上がる。由来を知って眺めると、音の小ささまで歴史に見えてきた。
- 吉田川親水遊歩道では、吉田川と小駄良川が合流する景色をベンチから眺められる。流れは力強いのに、川辺に座ると考えごとが静かになっていくのが不思議だった。
- いがわこみちは、家々の裏手を流れる大きな水路に沿った生活道路。木々と水に囲まれた細道を歩くと、観光の景色より先に、町の日常へ迷い込んだ感じがした。
- 郡上八幡旧庁舎記念館は、旧八幡町役場のレトロな建物を使った観光案内所で、休憩や郡上おどり体験もできる。古い床板の気配に、町の声が重なって聞こえた。
- 郡上八幡博覧館は大正時代の旧税務署を利用し、「水」「歴史」「わざ」「郡上おどり」を紹介する。実演の音を想像すると、町の祭りが展示室の外まで続いているようだった。
- 郡上八幡城は木造の再建天守で、城下町を見下ろす山上にある。細い坂道を登るあいだ足音が変わり、町の水音を遠くに置いて景色を聴く時間になった。
- サンプルビレッジいわさきでは、蝋を使う食品サンプルの製作体験やミニ博物館、手作り土産に出会える。食べ物そっくりの形が生まれる工程を思うと、静かな工房の音が気になった。