LoqiRoam · 旅日記
曲がった先に、戸倉の温度
戸倉駅近くの酒蔵から温泉街、千曲川、共同浴場、古寺、高台へ。曲がり角ごとに町の時間と地形を拾った。
戸倉に着いたときは、駅からどちらへ行っても同じような旅になる気がしていた。けれど最初の曲がり角で、駅の近くに残る酒蔵群へ足が向いた。酒造り四百年の記憶を抱えた蔵は、電車の到着音よりずっと古い時間を黙って持っている。そこから温泉街へ進み、池と東屋と足湯のある公園で、足だけ先に旅を始めた。千曲川萬葉公園では歌碑の並ぶ川辺を歩き、風に削られた石と水の流れを眺めた。次に入ったかめ乃湯は、観光客のためだけに整えられた場所ではなく、源泉掛け流しの湯が町の日常へつながっている感じがした。身体がゆるんだところで智識寺へ寄ると、室町後期の茅葺き屋根が、温泉街とは別の速度で時間を支えていた。最後は城山史跡公園へ上がった。細い道で近づいてきた町が、千曲川と山並みを含む大きな地形として一度に見える。まっすぐ歩けば短く済んだはずなのに、曲がったから、蔵、湯、石、屋根、川が順番に残った。
この旅の足跡
- 戸倉駅のすぐ近くに、酒造り四百年の記憶を抱えた蔵群が残っている。電車を降りて数分で、旅の景色がいきなり木と土の色に変わった。
- 水と緑と潤いのある公園は、池と東屋の脇に無料のカラコロ足湯がある小さな休憩地。温泉街の入口で足だけ先に旅を始めるのが妙に気楽だった。
- 千曲川萬葉公園には歌碑が並び、東屋で川の音を聞ける。観光案内の文字を追うより、風に削られた石を眺めている方がこの町らしく思えた。
- かめ乃湯は明治以来の天然硫黄泉を源泉掛け流しで使い、露天風呂や陶器風呂もある。百円玉に近い入浴料で、町の日常へ紛れ込めるのが嬉しい。
- 智識寺大御堂は室町後期の寄棟造・茅葺で、温泉街から少し離れるだけで屋根の厚みが別の時代を呼び寄せる。静かすぎて、蝉の声まで建物の一部に聞こえた。
- 城山史跡公園の荒砥城跡は午前9時から開き、櫓の向こうに千曲川と北信濃の山々が広がる。路地で縮んでいた視界が、最後に大きくほどけた。