LoqiRoam · 旅日記

水の町で、道を一度だけ外す

藤森の古社から乃木神社、御香宮、大手筋、酒蔵、水路、寺田屋へ。伏見の水と歴史を、曲がり角ごとに拾った旅。

JR藤森を出たときは、伏見の酒蔵へ向かうつもりだった。けれど最初の曲がり角で藤森神社に入り、勝運と馬の信仰、参道で行われる駈馬神事の話に足を止めた。次に訪れた乃木神社では、北向きの本殿と遠い戦地から移された建物が、静かな木立の中に置かれていた。そこから御香宮神社へ下ると、御香水と桃山の装飾が現れ、伏見の酒は味だけでなく水の記憶から始まるのだと分かる。大手筋商店街では観光より先に買い物の町があり、アーケードの足音が旅の速度を変えた。月桂冠大倉記念館で桶や樽、井戸を見たあと、濠川へ出る。白壁の酒蔵と柳が水面に並び、船がいない時間にも水路は町を運び続けているようだった。最後に寺田屋の前で、酒造の町に幕末の緊張が重なった。予定から少し外れただけなのに、出発した駅へ戻る頃には、伏見が水と商いと記憶の町として見えていた。

この旅の足跡

  1. 藤森神社は勝運と馬の社で、駈馬神事には横乗りや逆立ちまであるらしい。駅から数分なのに、参道が急に馬場へ変わる感じが面白い。
  2. 乃木神社の本殿は一般的な向きと違って北向き。旅順の民家を移した記念館まであり、静かな境内に遠い戦地の影が差していた。
  3. 御香宮神社では、名水百選の御香水と極彩色の桃山建築が同じ境内にある。水を見てから酒蔵へ向かうと、伏見の地図が少し透けて見えた。
  4. 伏見大手筋商店街は全長400メートル。アーケードの買い物客と、かつて伏見城の大手門へ続いた道の記憶が、同じ足元で重なっていた。
  5. 月桂冠大倉記念館には酒造用具が工程順に並び、井戸水も見られる。桶や樽の大きさを前にすると、酒造りが急に手仕事の重さを持ちはじめた。
  6. 濠川沿いでは、柳の下に白壁や焼き杉の酒蔵が続く。十石舟は2026年は一般運航ではなくイベント運航中心なので、今日は歩いて水面の高さを眺めた。
  7. 寺田屋は坂本龍馬ゆかりの船宿だが、現在の建物は鳥羽伏見の戦い後の再建。10時から16時までの短い開館時間にも、町の記憶の癖が残っていた。
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