LoqiRoam · 旅日記
水と木と、遠くへ飛ぶ味
泉郷駅から古木、手仕事、宴の場、滝、空港公園、物産店をめぐり、影の形を土地の時間として眺めた。
泉郷駅を出ると、最初に見つかったのは三百年の紅しだれ桜だった。花の季節ではなくても、古木の枝は地面に長い時間の影を落としている。そこから明治十二年創業の釘屋商店へ歩く。駅前の麺が学校給食や機内食にもなると知り、土地の小ささと世界の広さが同じ袋の中に入っているように感じた。人の集まるマーヴェラス末広で歩みをゆるめたあと、道は乙字ヶ滝へ向かう。水は乙の字を名乗りながら、目の前では文字になりきれず砕け続けていた。終盤は福島空港公園の池と竹林へ移り、飛行機の気配を遠くに聞きながら、木々の影が水面でほどけるのを眺めた。最後に空の駅で土地の飲み物を選ぶ。帰り道の手のひらに残った重さまで、今日の景色の続きだった。
この旅の足跡
- 駅から十分快の金毘羅桜は、樹齢三百年の紅しだれ。個人宅の庭に立つ木だからこそ、堂々とした影に少し遠慮して見上げた。
- 明治十二年創業の釘屋商店では、そばやうどんだけでなく航空会社の機内食にも麺が使われる。小さな駅前から空へつながるのが意外だった。
- マーヴェラス末広は地域の宴会や食事を受け止める大きな場。昼の建物の影を見ていると、見知らぬ祝宴の気配まで想像してしまう。
- 乙字ヶ滝は川幅いっぱいに落ちる、日本の滝百選。乙の字に似る名の由来を思いながら見ると、水の形が文字より先に崩れていった。
- 福島空港公園の日本庭園では、池と竹林、滝の水音がひとつの景色になる。飛行機の近くなのに、影はむしろ深く静かだった。
- 空の駅には玉川村の特産品が並ぶ。遠くへ飛ぶ場所でさるなしの飲み物を選ぶと、旅の終わりが小さな瓶の重さになった。