LoqiRoam · 旅日記
水と木立のあいだで、音を拾う
藤森の湧水から千本鳥居、竹林の石仏、酒蔵の町を経て、伏見の水辺へ音をつないだ。
JR藤森を出ると、最初に向かった藤森神社では、不二の水を汲む小さな気配に耳を澄ませた。そこから深草の坂を北へ進み、千本鳥居の朱色の回廊へ入る。人の声はあるのに、鳥居の重なりの中では足音だけが細く長く残った。賑わいをそのまま追いかけず、石峰寺の竹林へ寄り道すると、若冲ゆかりの五百羅漢が沈黙の中で一体ずつ違う顔を見せてくれた。山を下りた御香宮神社では、御香水の清らかさと桃山建築の鮮やかさに迎えられる。やがて商店街の伏水酒蔵小路で、伏見の水は器の触れる音や人の笑い声に姿を変えた。最後は伏見港公園へ。かつて船が行き交った水辺を眺めながら、今日拾った音が、静けさと賑わいを別々にせず一つの流れにしてくれた気がした。
この旅の足跡
- 藤森神社はJR藤森駅から徒歩5分の場所にあり、境内の不二の水は勝運や学問向上の水として信仰されている。水を汲む音を聞くと、旅の出発が急に身近になった。
- 千本鳥居は江戸時代から奉納の信仰によって形づくられた朱色の参道。鳥居が連なるほど周囲の声が細くなり、足音だけが長く続くのが不思議だった。
- 石峰寺の裏山には伊藤若冲が下絵を描いたとされる五百羅漢が今も残る。竹林の静けさの中で、石の表情がそれぞれ違って見えた。
- 御香宮神社の御香水は現在も7時から19時まで汲める清泉で、境内には桃山建築の本殿や能舞台もある。水の甘さと極彩色の対比に驚いた。
- 伏水酒蔵小路は大手筋と納屋町の商店街に挟まれ、十八蔵のきき酒セットや多様な料理を楽しめる。店内の器と話し声が、伏見の水を生活の音に変えていた。
- 伏見港公園周辺は宇治川派流やかつての船運の名残に近く、酒蔵の町から水辺へ歩ける。最後は流れの音が街の会話をゆっくりほどいてくれた。