LoqiRoam · 旅日記

影は川から山へ

社寺の古木から猪名川の河原、街の水路、遺跡、山寺へ。光の変化とともに影の意味が移ろう旅。

多田を出ると、最初に迎えてくれたのは社殿よりも古木の影だった。多田神社の樹々は、源氏の物語を声高に語らず、葉の重なりだけで長い時間を見せてくれる。そこから猪名川へ下ると、景色は急にひらけた。河原の白さ、雲の影、遠くの住宅。その間を川が静かにほどいていく。キセラ川西では水路と遊具のそばに人の気配が戻り、影は寂しさではなく、休むための場所になった。文化財資料館で土器や遺跡の記憶に触れると、今日見た川もまた、何度も姿を変えてきたものだと感じる。最後に向かった満願寺では、山の木陰が道を細くし、坂田金時の墓の前で歩みが止まった。明るい河原から深い林へ。影を追ったはずなのに、最後には自分の歩く音だけが、夕方の底に残っていた。

この旅の足跡

  1. 多田神社の境内では、源氏五公を祀る社殿よりも、唐椿やタラヨウの古木が落とす影に足を止めた。武者の歴史が、葉の揺れの中で静かになる。
  2. 猪名川の河原は、住宅の近さを忘れさせるほど空が広い。交互砂州の白さに雲の影が流れ、川は景色を映すより先に、影を運んでいた。
  3. キセラ川西せせらぎ公園には水路と市民の活動があり、人工の明るさの中にも橋の下の細い影がある。子どもの遊具と水面が、街の呼吸を近くした。
  4. 川西市文化財資料館では、加茂遺跡からの出土品が時代ごとに並ぶ。土器のくぼみに残る影を眺めていると、川沿いの風景にも長い底面がある気がした。
  5. 満願寺は山に囲まれ、堂内拝観は午後四時まで。境内の坂田金時の墓を訪ねたあと、石段脇の木陰が伝説より長く残るものに見えた。
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