LoqiRoam · 旅日記
佐用から、音の少ない輪郭へ
古社、巨樹、川端の宿場町、土地の食、天文台、棚田をつなぎ、静けさの異なる表情をたどった。
佐用から歩き始め、まず森の中の佐用都比売神社へ向かった。町の近くにありながら、木々の内側では音の届き方が変わる。そこから佐用の大イチョウへ戻ると、一本の木が千年とも伝わる時間を抱えて立っていた。次に佐用川を北へたどり、平福の石垣、川座敷、土蔵群を水面越しに眺めた。街道の歴史は案内板だけでなく、川沿いの建物の向きや、橋のたもとの沈黙にも残っている。道の駅で地元の豚や大豆を使った食の気配に触れたあと、山道へ転じた。西はりま天文台では、巨大な望遠鏡が空を向いている。旅の最後に乙大木谷の棚田へ進むと、遠い宇宙の話が、幾枚もの田を支える細かな手仕事へ静かに戻ってきた。
この旅の足跡
- 播磨風土記に登場する神を祀る佐用都比売神社は、平野の北に森をつくる古社だった。木々の内側だけ時間がゆっくりに見え、町の近くなのに音が薄いことに驚いた。
- 佐用の大イチョウは県指定天然記念物で、樹齢千年とも伝わる。列車の通る町のすぐそばで、一本の木がこれほど長く景色を見てきたのかと思うと、足音まで小さくなった。
- 平福の佐用川沿いには石垣、川座敷、土蔵群が連なり、金倉橋には少年時代の宮本武蔵の決闘伝承も残る。水面に映る建物は、街道の賑わいより静かに歴史を語っていた。
- 道の駅宿場町ひらふくは平福の川端風景を思わせる外観で、佐用町産のさよう姫ポークやもち大豆みそを使う料理がある。歩いた後の食事が、土地の話を口元から戻してくれた。
- 大撫山の山頂にある西はりま天文台には、公開望遠鏡として世界最大級の口径2メートル『なゆた』がある。山道を上がると、町の音がほどけ、空の広さだけが前に出てきた。
- 乙大木谷は日本棚田百選に選ばれ、幾枚もの田が谷に重なる。安倍晴明と芦屋道満の塚が伝わる場所でもあり、伝説の真偽より、農の斜面に残る人の手の反復が印象に残った。