LoqiRoam · 旅日記
水の気配を追って、まっすぐ帰らない
発酵食、港町の歴史、祭り、伏流水、海岸を、水の流れでつないだ寄り道の旅。
美川駅を出たとき、行き先は決めていなかった。最初に入った店で、ふぐの子や魚の糠漬が長い時間をかけて熟成されることを知る。次の角では、それが茶漬けやパスタに姿を変えていた。古い港町の味なのに、思ったより気軽で、少し拍子抜けする。そのまま石川ルーツ交流館へ進むと、北前船の記憶だけでなく、手取川の氾濫や治水の話が町の輪郭を作っているとわかった。藤塚神社では、おかえり祭りの台車が通る道を想像し、静かな境内に車輪の音を重ねた。最後は安産川の湧水へ。冷たい水の小さな流れが、やがて手取川と海へつながる。手取公園のクロマツの向こうで視界が開いたとき、今日は名所を巡ったのではなく、曲がり角のたびに水の行き先を追っていたのだと気づいた。
この旅の足跡
- 江戸後期創業の任孫商店では、ふぐの子や魚の糠漬を木樽で長期熟成している。店先で、港町の時間が味に沈んでいく感じがした。
- あら与は北前船の海産物問屋を起源とし、ふぐの子を使った茶漬けやパスタを出すカフェも併設する。珍味が急に日常の昼食になるのが面白い。
- 石川ルーツ交流館は、北前船で栄えた美川の歴史だけでなく、手取川の自然や治水も紹介する。町の記憶が海だけで完結しないことに気づいた。
- 藤塚神社は美川のおかえり祭りの中心で、13基の台車が町を巡る祭礼を支えてきた。静かな境内なのに、車輪の音がまだ角の向こうに残っている気がする。
- やすまる銘水は安産川親水公園に湧く白山美川伏流水群の一つで、白山からの水が長い時間をかけて現れる。流れの小ささに反して、背後の距離が大きい。
- 手取公園の美川側には手取川とクロマツの美川海岸が広がる。細い町道を抜けた先で視界が突然ほどけ、今日選んだ曲がり角が海まで続いていた。