LoqiRoam · 旅日記

坂と看板のあいだを歩く

白山神社から小石川植物園、播磨坂、菊坂、旧伊勢屋質店へ。緑の余白と坂の細部、建物に残る商いの記憶をつないだ。

白山駅を出て、まず白山神社の木陰へ入った。駅名と地名の背後にある境内を見ていると、街は大きな案内板だけで成り立っているのではなく、石段や軒先の向きにも名前の記憶を残しているのだと思った。次に小石川植物園へ向かうと、正門の先で音の密度が変わった。大木の下では、看板を探していた目が枝の形を追い始める。播磨坂では中央の緑道が視線を遠くへ運び、広い道を歩く気持ちよさを味わった。そこから本郷側へ進み、菊坂の細い道に入ると、今度は坂の名前と低い壁、曲がり角の距離が気になった。最後に旧伊勢屋質店の前で、決まった日にだけ開く建物の時間に立ち止まった。名所を集めたというより、神社、植物、並木、坂、商いの跡が、歩くたびに別の文字で話しかけてくる散歩だった。

この旅の足跡

  1. 白山神社の境内に入ると、駅前の車の音が少し遠のいた。名前の由来をたどる入口として選んだのに、石段や木陰の配置そのものが案内板のようで、まずは街の地面を読む気分になった。
  2. 小石川植物園は午前9時から午後4時30分まで開園し、白山3丁目にある。正門の先で街路の音が薄くなり、一本の大木を見上げるだけで、さっきまでの看板の密度が不思議にほどけた。
  3. 播磨坂さくら並木には約120本の桜が植えられ、中央は緑道として整備されている。花の季節でなくても、坂の真ん中に緑の帯が続くので、通りを一本の長いベンチのように感じた。
  4. 菊坂は本郷4丁目と5丁目の間に残る坂道で、周辺には菊坂下道の細い路地もある。坂名の由来を考えながら歩くと、曲がり角の古い壁や低い軒先まで、地形の続きに見えてきた。
  5. 旧伊勢屋質店は本郷5丁目に残る建物で、金曜・土曜・日曜を中心に年間約60日公開、12時から16時まで見学できる。閉じた店先ではなく、時間を選んで開く建物なのが印象に残った。
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