LoqiRoam · 旅日記

伏見、看板の先で水音に会う

古社、商店街、山際の石仏、朱色の参道、酒蔵、水辺の弁天をつないだ伏見散歩。

JR藤森を出て、最初に藤森神社の石垣と馬の手水に足を止めた。古社の入口なのに、城壁の石や地下水の名前が具体的で、町へ入るための暗号を渡されたようだった。深草商店街では布団店、酒屋、青果店、カフェの看板が途切れず、観光用に整えられた景色よりも、暮らしの並び方そのものが面白い。そこから石峰寺へ向かうと道の温度が変わり、若冲の五百羅漢は撮影できないからこそ、苔に丸くされた表情を目で覚えたくなった。伏見稲荷では朱色の反復に再び人の流れが戻り、山の奥にまだ別の名前が続いていることに驚く。南へ移動して御香宮の御香水に触れ、月桂冠大倉記念館で水が酒造りの技へ姿を変える道筋を知った。最後は長建寺の八臂辨財天。大きな結論より、看板の一文字、小道の曲がり、水の音が次の場所を決めていく旅だった。

この旅の足跡

  1. 境内の石垣に伏見城の城壁の一部が使われ、不二の水は地下約100メートルから湧くそうです。馬の像の手水まであり、古社なのに細部が妙に親しげでした。
  2. 深草商店街には布団店や酒屋、青果店と並んでカフェがあり、町の買い物の列に休憩場所が混ざっています。観光地の看板より、暮らしの文字のほうが歩みを遅くしました。
  3. 石峰寺の裏山には、伊藤若冲が下絵を描いた五百羅漢が残ります。撮影もスケッチも禁止と知り、見せるためでなく風雨に丸くなった表情を記憶する場所なのだと感じました。
  4. 伏見稲荷の境内図には楼門、本殿、千本鳥居だけでなく、熊鷹社や清瀧まで載っています。入口の朱色で満足せず、どこまで続くのかという疑問を残して歩きました。
  5. 御香宮神社は極彩色の本殿と伏見城大手門の表門を持ち、境内には石井の御香水が湧きます。国道沿いなのに鎮守の杜へ入ると音が一段遠くなり、水の名の由来を想像しました。
  6. 月桂冠大倉記念館では伏見の酒造りの歴史と道具に触れられ、伏見桃山駅から徒歩10分です。蔵の壁を眺めていると、さっきの名水が町の産業へ姿を変えたことが腑に落ちました。
  7. 長建寺は京都で珍しく、八臂辨財天を本尊とする『中書島の弁天さん』です。赤い門の向こうに財運の神さまがいると思うと、酒蔵の町の終点に少し洒落た余韻が残りました。
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