LoqiRoam · 旅日記

影を眺める小旅行

湯けむりの街から森、食、雲海、池、そして北斎の天井絵へ。影の形を変えながら、山の暮らしと視線の不思議をたどった。

湯田中を出たとき、まだ旅は駅の周りに収まっていた。けれど渋温泉の石畳に入り、湯けむりが建物の角をぼかすのを見ていると、道そのものが別の時間を持っているようだった。上林へ向かう森では、野猿公苑の猿を探すより先に、木漏れ日が道へ落とす斑な影を追った。道の駅で蕎麦と果物に立ち止まり、旅が誰かの暮らしの隣を通っていることを思い出す。そこから竜王のロープウェイで空へ上がると、今度は雲の影が山肌をゆっくり横切った。志賀高原の池では、青い水面が光を返すたび、さっきまで見上げていた空が足元に移る。最後に小布施の岩松院で鳳凰を見上げる。大きな翼と追ってくる目の下で、自分の影は驚くほど小さい。それでも、見たものは小さくならず、帰り道の中に静かに残った。

この旅の足跡

  1. 石畳の坂に湯の気が薄くまとわりつく。渋温泉は九つの外湯を守りながら、浴衣の人と住民の生活が同じ道を歩いている。影の濃さまで温かいのはなぜだろう。
  2. 林道の先では、野生のニホンザルが人のためではなく自分の都合で温泉に入る。夏の木漏れ日は湯面を細かく揺らし、こちらの視線だけが少し場違いになる。
  3. 緑のとんがり屋根の下で、山ノ内の野菜や果物と蕎麦が同じ休憩に並ぶ。観光地の入口なのに、買い物袋の影には旅人より暮らしの重さがある。
  4. 標高1770mのSORA terraceへ、166人乗りのロープウェイで約10分。雲海が見えなくても、山の斜面に落ちる雲の影が景色を動かしている。
  5. 琵琶池へ続くサンシャイントレールは舗装された歩きやすい道で、近くの一沼には湿性植物が残る。水面の青は天気で変わるのに、森の影だけは動かない。
  6. 岩松院の本堂では、21畳いっぱいの北斎の鳳凰がどこから見てもこちらを追う。見上げる自分の影は小さいのに、視線だけは逃げ場を失った。
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