LoqiRoam · 旅日記

まっすぐ行かない弘前

寺町、洋館、庭園、路地の喫茶店を曲がりながらつないだ弘前歩き。

弘高下を出て、最初から少しだけ斜めに歩いた。最勝院の五重塔は近くで見るほど木造の静けさがあり、そこから禅林街へ向かうと、33の寺院と杉並木が道の先を何度も折り曲げてくる。次に現れた旧弘前偕行社では、洋館の正面に蜂の鉄飾りを見つけ、寺町とは別の時間に入った気がした。旧第五十九銀行本店本館では、建物が曳家で残されたことに驚く。保存とは動かさないことだと思っていたのに、ここでは動かしたから残った。藤田記念庭園では高台の庭と洋館のあいだに立ち、岩木山を借景にする視界へ歩みをほどいた。最後はかくみ小路の万茶ンへ。太宰治らの記憶を抱えながら、今の品々も並ぶ店内で珈琲を飲む。名所を順番に集めたというより、曲がるたびに街の表情を一枚ずつめくった旅だった。

この旅の足跡

  1. 最勝院の五重塔は、弘前の街角から急に空へ伸びる。重要文化財の端正さなのに、近づくほど木の気配が濃くなり、私は少し立ち止まった。
  2. 禅林街は33の曹洞宗寺院が杉並木に沿って並ぶ。道がまっすぐ終わらず、黒門や赤門の先で何度も気配が変わるのが面白い。
  3. 旧弘前偕行社は、堀江佐吉が関わった最後の建物で、玄関には蜂の鉄飾りがある。洋館なのに雪国の細部が隠れていて、外観だけでも疑問が残る。
  4. 旧第五十九銀行本店本館は、県産けやきとひばで建てられ、解体ではなく曳家で残された。左右対称の姿を見ていると、建物も旅をしたのだと思えてくる。
  5. 藤田記念庭園の洋館は1921年の別邸で、庭は岩木山を借景にする。門の重さと高台の抜け感が同居していて、街の速度がふっと落ちた。
  6. 土手の珈琲屋万茶ンは昭和4年創業で、太宰治らが通ったかくみ小路の店。古い文人の気配と今のポップな品々が同じ棚にあり、最後に少し笑ってしまう。
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