LoqiRoam · 旅日記
東員から、音の少ない方へ
珈琲、祭礼、水辺、植物、山の信仰をつなぎ、東員から多度の高みまで静かな気配をたどった。
東員の出発点から、まず自家焙煎の珈琲を置く小さな店へ向かった。朝の店内には、旅人向けに整えられた華やかさより、町の人がそれぞれの時間を始める落ち着きがあった。そこから猪名部神社へ歩く。上げ馬や流鏑馬で知られる場所だが、祭礼の日ではない境内には、行事を支えてきた時間だけが静かに残っていた。次に戸上川沿いの中部公園で水の音を聞き、町の現在へ戻る。北勢線で少し範囲を広げた先の万葉の里公園では、約140種の植物と古い歌の名をたどった。最後は多度大社の山裾から多度山上公園へ上がる。遠くの川と町を眺めていると、静けさは音がないことではなく、いくつもの時間が重なっても急かされないことなのだと思えた。
この旅の足跡
- 朝の店内には自家焙煎の香りがあり、12時までモーニングも頼める。旅先で最初に聞こえたのは観光の声より、町の一日の始まる気配だった。
- 猪名部神社は、猪名部氏を「礎の神」として伝え、春には上げ馬と流鏑馬の大社祭が奉納される。祭りのない境内にこそ、長い継承の静けさが見えた。
- 中部公園の中央を戸上川が流れ、せせらぎ沿いに河川広場が続く。子どもの遊び場と水の音が同居していて、町の公園なのに視線が遠くまでほどけた。
- 万葉の里公園には、万葉植物が約140種、歌とともに紹介されている。花だけを見るつもりが、名づけられた植物の間で古い声を探す散歩になった。
- 多度大社は天津彦根命と天目一箇命を祀り、北伊勢大神宮とも呼ばれてきた。受付時間を確認して訪ねると、山の入口にある社の空気が思ったより静かだった。
- 多度山上公園は芝生と眺望を備え、揖斐川や長良川の方向まで見渡せる高所にある。登るほど生活音が薄れ、最後に残ったのは風の向きへの疑問だった。