LoqiRoam · 旅日記
曲がり角の先で、九度山
真田の記憶から里坊、茶屋、参詣道、川辺へ。路地の選択で九度山の時間の層をたどった。
九度山駅を出たときは、真田の物語を見に行く旅になると思っていた。けれど最初の角で少し迷い、ミュージアムの六文銭から真田庵の静かな境内へ進むうち、町は一つの英雄譚ではなく、いくつもの時間が重なった場所に見えてきた。江戸の里坊だった旧萱野家では、大石順教尼の書画にまつわる人生が建物の中から立ち上がり、真田いこい茶屋では、うどんとコーヒーの間に町の現在があった。そこから慈尊院へ向かうと、路地の旅は参詣道の旅へ姿を変えた。石段の上の丹生官省符神社と179町石を見て、道には目的地だけでなく、歩いた人の厚みが刻まれるのだと思う。終わりに九度山橋へ出ると、紀の川と丹生川の合流点の空が思ったより広い。今日は名所を集めたというより、狭い道から坂、社、川へと視界がほどけていく順番を拾った旅だった。
この旅の足跡
- 六文銭の門をくぐると、町の物語が急に濃くなる。展示の仕掛けは少し遊び心があり、ここからどの路地へ曲がるか迷った。
- 八つ棟造りの本堂と真田昌幸の墓が同じ境内に残る。華やかな家紋の下なのに、空気は意外なほど静かだった。
- 江戸中期の高野山里坊が町家として残り、書画を残した大石順教尼の記念館になっている。建物の来歴が二重で面白い。
- 古民家の休憩所で、うどんやコーヒーを選べる。地元ボランティア運営という気配に、観光地の輪郭が少しやわらいだ。
- 慈尊院は九度山駅から徒歩約20分。境内に立つと、町の小さな道が高野山へ続く入口だったことを身体で感じる。
- 慈尊院から石段を上ると、三棟の極彩色の本殿と179町石が現れる。坂の上で、道が単なる道でなくなる。
- 紀の川と丹生川の合流付近に架かる橋。町の細い道を歩いたあと、川原と空の広さが急に現れて少し驚いた。