LoqiRoam · 旅日記
湯けむりの向こうへ
鉄輪の湯治文化から明礬の高台まで、蒸気の姿を変えながら歩いた旅。
雲泉寺を出ると、道は少しずつ鉄輪の湯けむりへ近づいていった。最初に立ち寄ったむし湯では、石菖の香りを想像しながら、温泉が観光資源になる前から人の身体を休ませてきた時間を思った。地獄蒸し工房では、その蒸気が今度は食材を囲む共同の台所になる。青い海地獄の水面で視界が大きく変わった後、地獄地帯公園の木陰に入ると、町の熱が森の静けさに吸い込まれていくようだった。湯けむり展望台では、近くで白く揺れていた蒸気が町の輪郭として見え、最後に明礬へ上ると、湯の花小屋と別府湾の明るさが待っていた。甘いプリンを終着の印にしながら、静けさは無音ではなく、湯が湧き続ける音の中にあるのだと感じた。
この旅の足跡
- 鉄輪むし湯では、熱せられた床に石菖が敷かれる。香りを残して帰る湯治とは、体を温める以上に記憶へ働くものなのだろうか。
- 地獄蒸し工房では、98度の温泉噴気で食材を蒸せる。湯治客の自炊から続く仕組みが、今も町の食卓として動いているのが印象に残る。
- 海地獄は水面が海のようなコバルトブルーに見える。熱い源泉なのに視線は涼しくなる、その色が自然現象なのか景観演出なのか少し考えた。
- 鉄輪地獄地帯公園には自然林の散策路と十万公園、展望公園がある。地獄の名を冠しながら、木陰では音がほどけていくように感じた。
- 湯けむり展望台からは鉄輪の町と立ちのぼる湯けむりを見渡せる。近くで白く見えた蒸気が、遠くでは町の輪郭を描いていた。
- 岡本屋売店は明礬の高台で、湯の花小屋と別府湾の眺め、地獄蒸しプリンを一度に味わえる。甘さの背後に硫黄の気配が残る。