LoqiRoam · 旅日記

海の音が薄くなる方へ

田鶴浜駅から野鳥公園、寺と旧市街、古民家の食事処を経て、赤蔵山の御手洗池まで静けさの層をたどった。

田鶴浜駅では、まず海を探した。ホームから湾が見えるという話を思い出しながら歩いたが、最初に目に入ったのは駅舎の組子細工だった。細い木の線が重なり、町の産業が看板ではなく手触りとして残っている。そこから野鳥公園へ向かうと、水田と湾の境目で風の音が大きくなった。双眼鏡をのぞいても鳥はすぐには見つからず、見つからない時間の方がこの場所に似合っている気がした。町へ戻り、東嶺寺の山門と古い家並みをたどる。見学には予約が必要な寺だったので、境内を急いで覗き込まず、通りから静かに眺めた。最後に古民家の語ろう亭で、避難所から始まった居場所が今も昼の定食と夜の灯りを受け継いでいることを知った。そこから赤蔵山へ移ると、道は森に吸い込まれ、御手洗池の水面だけが明るかった。名所を集めたというより、町の現在から森の奥へ、音が少しずつ薄くなる順番を歩いた旅だった。

この旅の足跡

  1. ホームの桜の隙間から七尾湾が見えると知って来たが、今日は海より先に、駅舎の組子細工と毎月続く展示の気配に足が止まった。
  2. 池と草地の向こうに七尾西湾がひらけ、観察台の大きな双眼鏡が置かれている。鳥を探しに来たのに、先に聞こえたのは水面を渡る風だった。
  3. 山門と本堂が市指定文化財になった寺が、駅からわずか徒歩五分の町中にある。見学は予約が必要で、近づきすぎない距離そのものが印象に残った。
  4. 海辺なのに漁師町らしさより宿場町のような大型の平入り家屋が続く。通りを歩くと、古い家の軒下と新しい空き地が同じ静けさに包まれていた。
  5. 昼は定食、夜は居酒屋として開く古民家の語ろう亭。避難所で始まった一時間の居場所が今も続くと知り、食事よりも灯りの残り方を見ていた。
  6. 赤蔵山の歴史遊歩道を上ると、御手洗池は名水百選の水をたたえている。展望台へ向かう道より、森の中で足音が小さくなる瞬間の方が長く残った。
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