LoqiRoam · 旅日記

山の影から、校舎の影まで

村井から松本の展望、土蔵の町並み、川辺、郷土食、美術館、旧校舎へ。遠い山影が、最後は芝生の上の長い影へ変わった。

村井を出ると、旅は駅前の点から少しずつほどけていった。まずアルプス公園の高みへ向かい、北アルプスの稜線を遠くに置いた。山の影を眺めたあと、中町通りのなまこ壁へ入り、白と黒の境目に積もった時間を見た。縄手通りでは女鳥羽川の明るさが歩みを軽くし、山賊焼の香ばしさが身体をこちら側へ引き戻した。午後は松本市美術館の強い色に影の小ささを思い知らされ、最後にあがたの森へ着いた。木造校舎と樹木が芝生へ落とす長い影は、遠い山から始まった一日を、足元の静かな暗がりへつないでいた。

この旅の足跡

  1. 村井では、駅前の利便より先に遠い山並みの存在が目に入った。出発点は目的地ではなく、どちらへ影を探しに行くかを決める小さな合図だった。
  2. アルプス公園の高所からは、北アルプスを含む山並みを大きく見渡せる。遠くの稜線を眺めるはずが、雲の切れ間で影のほうが先に輪郭を持った。
  3. 中町通りには、火災から町を守ったなまこ壁の白と黒が残る。老舗と新しい店が並ぶ通りで、壁の濃い影だけが時間を止めているように見えた。
  4. 縄手通りでは、女鳥羽川沿いの細い明るさが建物の影をほどいていく。歩行者の流れと水際の空気が近く、観光地なのに呼吸が軽くなった。
  5. 松本の山賊焼は、揚げた鶏の香ばしさと大きさに土地の勢いがある。照明の下で湯気が短い影をつくり、歩いてきた時間まで食卓へ戻ってきた。
  6. 松本市美術館では、草間彌生の水玉や強い色が街の静かな陰影を一度反転させる。作品の前で、自分の影が思ったより小さく見えた。
  7. あがたの森では、旧制学校の木造校舎と樹木が芝生へ長い影を落とす。最後に残ったのは名所の輪郭ではなく、風に揺れる葉の暗がりだった。
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