LoqiRoam · 旅日記

影の端をたどる

佐布里池の水辺から半田の醸造蔵と文学館を経て、常滑の招き猫通りと登窯へ向かった。影を、土地に積もった時間として眺める旅。

白沢を出て、最初に向かった佐布里池では、水面の反射と梅林の枝影が風のたびに入れ替わった。そこから半田へ移ると、景色は自然の陰影から、黒板塀の醸造蔵がつくる深い線へ変わった。運河沿いを歩き、酢や酒が運ばれた時間を想像したあと、新美南吉記念館へ寄り道した。地面に沈むような建物と物語の舞台が、歩く速度をそっと遅くしてくれた。終盤は常滑へ向かい、巨大な招き猫と39体の陶製猫に見送られながら、やきもの散歩道へ入った。登窯広場に残る煤と煙突を眺めていると、今日見てきた影は、光の不足ではなく、水と酒と物語と火が積み重なった跡なのだと思えた。帰り道の空は明るかったが、目の奥にはまだ、窯の内側の暗さが残っている。

この旅の足跡

  1. 佐布里池の水面は風のたびに明るさを変え、約6,000本の梅林はまだ枝の影を濃くしていた。花より先に、池へ伸びる細い暗がりに目が留まる。
  2. 半田運河には酢や酒を運んだ歴史があり、黒板塀の蔵が水際に影を落とす。歩いているのに、風の中へ醸造の時間がほどけていくようだった。
  3. 新美南吉記念館は『ごん狐』の舞台とされる中山の地にあり、地面に沈むような建物が丘の静けさを引き立てている。物語の影が現実の地形に重なった。
  4. とこなめ招き猫通りでは、壁の上から幅6.3メートルの巨大な猫が顔を出し、39体の陶製猫がそれぞれ別の願いを見つめている。影まで招いているようだ。
  5. やきもの散歩道には煙突、窯、工場、土管坂が連なり、登窯広場では実際に使われた窯の大きさが残る。黒い煤の跡が、町の明るさを逆に際立たせていた。
地図と足跡で読む