LoqiRoam · 旅日記
石段、照り、絵の中の光
酒折宮の古い物語、甲府の郷土料理、城跡から美術館へ続く光をつなぐ小さな旅。
酒折を出たときは、駅の周りを少し歩くくらいのつもりだった。けれど酒折宮の石段に立つと、甲府には駅の時計よりずっと古い時間が流れていると気づく。連歌発祥の地という物語を胸に、街なかへ移動して甲府城跡へ上がった。石垣の向こうに盆地の空が広がり、城は建物だけでなく、高低差と眺めで残るものなのだと実感する。甲府鳥もつ煮の甘辛い照りでひと休みすると、旅は急に生活の味を帯びた。さらに山手御門で城下町の北口を見直し、武田神社では城ではなく居館の気配へ。最後は山梨県立美術館で《種をまく人》に会い、今日拾った三つの発見――古い記憶、濃い味、静かな光――をゆっくり重ねた。
この旅の足跡
- 酒折宮は古事記と日本書紀に記された山梨県唯一の古社で、連歌発祥の地ともいわれる。駅の近くなのに、石段の先だけ時間の密度が違って見えた。
- 甲府城跡は現在の舞鶴城公園として残り、野面積みの石垣と盆地を望む高台が魅力。城の建物より、足元の斜面と空の広さに城らしさを感じた。
- 甲府鳥もつ煮はレバーや砂肝などを甘い醤油だれで煮詰める郷土料理。照りの強い一皿を想像すると、山の町の味は意外に力強い。
- 甲府市歴史公園の山手御門は、山手門と山手渡櫓門を復元した城の北口。石垣を土台にした門の大きさに、駅前の道が昔の入口へ変わる感覚があった。
- 武田神社は武田晴信公を祀り、かつての躑躅ヶ崎館の場所に建つ。観光地の中心から少し離れるだけで、甲府の歴史が城ではなく屋敷の輪郭になる。
- 山梨県立美術館は《種をまく人》をはじめミレー作品を収蔵する「ミレーの美術館」。赤や緑の展示室を歩くと、甲府の午後の光まで絵の続きに見えた。