LoqiRoam · 旅日記
根の形、水の音
由岐神社から鞍馬寺、木の根道、奥の院を抜け、貴船神社と貴船川へ下った山越えの旅。
鞍馬駅から歩き始めて、最初の曲がり角では由岐神社へ向かった。火祭で知られる社の坂は、門前町の続きに見えたのに、鳥居を越えると山の静けさへ急に変わった。鞍馬寺本殿では金剛床の模様を眺め、宇宙と一体になるという考えを、少しだけ足の裏で想像する。その先の霊宝殿と冬柏亭で、寺は建物だけでなく山全体を自然の博物館として見ていると知った。けれど本当に足を止めたのは木の根道だった。硬い地面を避けるように根が地表を這い、伝説より先に木々の工夫が目に入る。奥の院の魔王殿へ進む道では、息つぎの水や背比べ石の物語が杉林の暗がりに重なった。そこから貴船へ下ると、山の気配は水の音へ変わる。貴船神社の石段を抜け、川床の並ぶ川辺で休む。歩く前には想像しなかった終わり方だったが、曲がり角を選び続けた旅には、ちょうどよい涼しさだった。
この旅の足跡
- 朱色の社殿より、ここでは火祭の夜を想像するほうが似合う。境内へ続く坂は門前町の延長なのに、曲がると急に山の静けさへ変わった。
- 本殿前の金剛床は星曼荼羅を模した修行の場だという。足元の模様を見ていると、山寺なのに宇宙へ踏み出す床にも思え、少し大げさで好きだ。
- 本殿の先には霊宝殿と冬柏亭があり、鞍馬山全体を自然ミュージアムと捉える考え方が残る。寺宝だけでなく、木々まで展示品に見えてきた。
- 硬い地質のため杉の根が地中へ入れず、地表で網目のように絡む木の根道。義経伝説より先に、木が困った末の形に見えて、妙に現実的だった。
- 魔王殿へ向かう奥の院参道には、息つぎの水や背比べ石など義経ゆかりの場所が続く。伝説を追っていたはずが、杉林の暗さのほうに先に引き込まれた。
- 貴船神社は水の神を祀る古社で、本宮の参拝時間は季節により案内されている。山を越えた先で石段と水音が現れ、同じ森なのに出口の表情が違った。
- 貴船川沿いには夏の川床が並び、川面の近くで涼を楽しめる。社殿の静けさから一転、流れと食事の気配が混じるこの道を、終着に選んだ。