LoqiRoam · 旅日記
水面の影、煉瓦の記憶
古民家、線路跡の石像、鉄橋、河川敷、水門、現役のポンプ室を水の流れでつなぎ、垣生公園の木陰で終える旅。
筑豊中間の駅前を出ると、最初に迎えてくれたのは、築150年の古民家を使う小さなカフェだった。営業日を確かめながら、まだ開かない扉の向こうに町の暮らしを想像する。そこから旧国鉄香月線の跡地へ歩くと、モアイやスフィンクスが住宅街の細長い道に並び、知らない土地の影が日常の隣に立っていた。やがて遠賀川へ向かう。古い鉄橋のレンガ橋脚、水面を渡る風、市役所前の河川敷。人工物の記憶が川の明るさに薄められていく。中間唐戸では、江戸から続く水門が今も水の入口を守っていた。その先で見た遠賀川水源地ポンプ室は、非公開の敷地の外からでも、現役の建物として静かな力を放っていた。最後は垣生公園へ戻り、池と朱塗りの橋、木々の下の影を眺めた。古墳の気配も、産業の煉瓦も、川の風も、帰るころには一つの長い水音になっていた。
この旅の足跡
- 築150年の古民家を使う金土日のカフェで、釜飯の湯気を想像した。歩き始めにここを選んだのは、町の時間へ静かに入る扉に見えたから。
- 旧国鉄香月線の跡地に、モアイやスフィンクスなど約30体の石像が400メートル続く。異国の影が住宅街に立つ不思議を、朝の光で確かめたい。
- 筑豊本線の遠賀川橋梁には、石炭輸送を強めた1891年架設当時のレンガ橋脚が残るという。水面に落ちる直線の影と、鉄道の古い重さを見比べたい。
- 中間市役所前の遠賀川河川敷は、無料駐車場を備えた散策の場で、かつて川ひらたが石炭を運んだ川でもある。風だけが今の荷物を運ぶようだった。
- 中間唐戸は、1621年に掘削が始まった堀川の取水口に残る県指定文化財で、見学は自由。水を止める仕組みなのに、周囲には静かな流れが続いていた。
- 1910年操業の遠賀川水源地ポンプ室は今も稼働し、敷地外の眺望スペースから外観を見られる。動き続ける機械の影に、百年の水音を想像した。
- 垣生公園には池と朱塗りの太鼓橋、埴生神社があり、約1400年前の横穴墓群も点在する。一部史跡は立入状況に注意しながら、木々の影だけを眺めて終えたい。