LoqiRoam · 旅日記

道の記憶が水辺へほどける日

資料館、劇場、菓子文化、宿場町、邸宅、水辺をつなぎ、飯塚の記憶が最後に静かな川辺へほどけていく旅。

浦田から歩き始め、最初に飯塚市歴史資料館へ入った。石炭や地域の資料を見ていると、この町は大きな出来事だけでなく、働く人の手つきによって形づくられたのだと感じた。そこから嘉穂劇場へ向かうと、畳の桝席と廻り舞台の話が、展示室の記憶を人の集まる場所へ変えてくれた。千鳥屋本家では菓子を買うつもりが、店に残る古い品々に足を止めた。飯塚本町商店街のアーケードでは、長崎街道が過去の道ではなく、今も買い物のために歩かれる道として続いていた。最後はバスで旧伊藤伝右衛門邸へ移り、畳の長さ、ステンドグラス、庭の静けさを順に眺めた。帰り道は遠賀川沿いの自転車歩行者道へ出た。豪華な邸宅のあとに見る水面は控えめだったが、その控えめさがよかった。町の歴史を覚えたあと、風の音だけを残して旅を終えた。

この旅の足跡

  1. 柏の森の資料館には、石炭だけでなく地域の歴史が層になっている。入館時間を確認すると、静かな展示室で町の輪郭をゆっくり拾えそうだ。
  2. 嘉穂劇場は、畳の桝席と人力で動かす廻り舞台を今に伝える劇場建築だった。現代の公演状況とは別に、建物自体が静かな時間の証人に見える。
  3. 千鳥屋本家飯塚本店は菓子を売るだけでなく、黒田家や徳川家ゆかりの品と店の歴史も展示している。甘い休憩が、そのまま宿場の記憶になるのが面白い。
  4. 飯塚本町商店街は長崎街道飯塚宿の道筋をアーケードとして残している。屋根の下に日常の店が並び、歴史が観光用の背景ではなく現在の通路になっていた。
  5. 旧伊藤伝右衛門邸には、長い畳廊下、洋風のステンドグラス、回遊式庭園が同居している。炭鉱王の豪華さだけでなく、白蓮の部屋が庭を見下ろす構図に気持ちが引かれた。
  6. 飯塚直方自転車道は遠賀川の河川敷を通る12.8キロの自転車歩行者専用道で、散歩にも使われる。名所の説明が途切れたあと、水面と風だけを確かめる終着にしたい。
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