LoqiRoam · 旅日記

潮の音が町の奥まで届く日

波方から今治の公園、城、産業、海峡、港をめぐり、潮と暮らしの音の変化をたどった。

波方を出るとき、旅は船の音から始まると思っていた。けれど最初に出会ったのは、波方公園の高いところを抜ける風だった。しまなみ海道を遠くに眺めていると、まだ移動していないのに、海が先に旅を進めてくれる。今治へ向かってからは、城の堀に浮かぶ水鳥の声、タオルの厚みを指で確かめる静かな時間、来島海峡を渡る風へと、音の表情が少しずつ変わった。大きな景色を見に行ったはずなのに、心に残ったのは音と音のあいだだった。最後の波止浜港では、ロープの軋みと遠いエンジン音が、出発した波方の気配をそっと連れ戻してくれた。町を移動したというより、潮の気配が形を変えるたびに、私の歩く速さも変わっていった。

この旅の足跡

  1. 波方公園の遊具のてっぺんから、しまなみ海道が思いのほか近くに見えた。風が高いところから先に届き、出発したばかりなのに、もう海の向こうへ呼ばれている気がした。
  2. 今治城の堀を一周すると、街の音の中に水鳥の声だけがすっと浮かぶ。海城として築かれた水の輪郭は、石垣よりもむしろ反響の少なさで印象に残った。
  3. 今治タオル本店では、白いタオルが並ぶ静かな空間で、厚みや張りを手で比べられる。織機の音は聞こえないのに、触れるほど町の産業が近くなるのが不思議だった。
  4. 来島海峡サービスエリアの展望テラスから、三連吊橋と大小の島々が一度に見える。車の走行音が近い場所なのに、風が視界を押しひらき、潮の流れまで耳で想像できた。
  5. 波止浜港では、船を待つ時間そのものが風景になる。潮の匂いに、ロープの軋みと遠いエンジン音が重なり、波方から続いてきた水の気配が、最後に生活の音として戻ってきた。
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