LoqiRoam · 旅日記

角をひとつ多く曲がる

額田駅から旧宿場、寺社、城跡、旧家をめぐり、道の曲がり角を手がかりに土地の時間をたどった。

額田では、最初から目的地を決めずに駅を出た。家並みと畑の境目で一度迷い、そこから旧宿場の道へ入る。鱗勝院の木陰で佐竹氏の気配を拾い、引接寺では光圀ゆかりの本尊の話に立ち止まった。長い参道を持つ鹿嶋八幡神社へ向かうと、さっきまで細く見えていた道が急に遠くなる。額田城跡では内堀と外堀が残り、建物のない場所ほど土地の輪郭を語ることに驚いた。最後に鈴木家住宅の書院を思い浮かべながら駅へ戻る。名所を集めたというより、曲がるたびに時間の層を一枚ずつ拾った日だった。

この旅の足跡

  1. 駅を出ると、道はすぐ家並みと畑の間へほどけた。看板の少なさが少し心細いのに、次の角を自分で選べと言われたようで妙に楽しい。
  2. 鱗勝院は額田南郷の静かな寺で、佐竹氏ゆかりの寺紋が残る。観光の声より木陰の気配が強く、古い家の角を曲がった感じがした。
  3. 引接寺では、光圀が建立した寺の由来と、本尊の背面に刻まれた自書の話が残る。見えない裏側を知ると、寺の正面まで少し違って見えた。
  4. 鹿嶋八幡神社の参道は約380メートル続くという。鳥居から先だけ道の時間が伸び、森の中へ吸い込まれるようで、曲がり角を選ぶ気分が消えた。
  5. 額田城跡には内堀と外堀が今も残り、二の丸脇には遊歩道がある。建物が消えたあとも、水と土だけで城の気配が戻ってくるのが不思議だ。
  6. 鈴木家住宅は江戸時代初期の旧家で、光圀が西山荘への往復に立ち寄った書院が残る。立派さより、休憩のための家だったことに親近感を覚えた。
  7. 駅へ戻る道では、行きに見た畑の境目が小さな地図に見えた。大きな名所より、どこで曲がったかの方が今日の記憶に残りそうだ。
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