LoqiRoam · 旅日記

海辺の町で拾った三つの感触

萩の海辺と城下町をめぐり、石垣、夏みかん、焼き抜き蒲鉾から三つの小さな発見を集めた。

鍋倉を出て、萩の海辺へ向かった。最初に足を止めた萩城跡では、天守の不在よりも、海側の断崖と石垣に残る矢穴痕が気になった。昔の城が海を背にしていた理由が、説明を読む前に地形から伝わってくる。菊ヶ浜へ抜けると、白砂と指月山の組み合わせが一気に視界を明るくした。そこから堀内の白壁と夏みかんの町並みを歩き、古い区画の中に季節の香りが差し込む不思議を楽しんだ。指月山の森と明倫学舎では、景色の背後にある時間の厚みを感じた。最後は焼き抜き蒲鉾を味わい、魚が港町の記憶を食感に変えることに驚いた。今日集めた三つは、石の冷たさ、夏みかんの香り、蒲鉾の歯切れ。名所を急いで数えるより、土地の小さな手触りを拾うほうが、帰り道まで旅が続くようだった。

この旅の足跡

  1. 城跡なのに、海側の断崖と石垣の矢穴痕が先に目に入った。天守が消えたあとも、ここが海を守る場所だったことだけは、石がまだ覚えている。
  2. 菊ヶ浜は白砂青松の名の通り、足元が明るい。砂浜から指月山を眺めると、山が城跡の背景ではなく、海へ張り出す町の背骨に見えてきた。
  3. 堀内は上級武士の屋敷地だった直線が残り、白壁の向こうに夏みかんが見える。古地図の町なのに、香りだけは今日の風として届くのが面白い。
  4. 指月山は城の詰丸が置かれた天然の要塞で、森には樹齢六百年超とされる巨樹もある。登る前から、眺望だけでなく時間の厚みに少し圧倒された。
  5. 旧明倫小学校を使った明倫学舎は、藩校から学校まで三百年を一つの建物でたどれる。木の廊下を歩くと、旅先で授業を受けているような気分になった。
  6. 焼き抜き蒲鉾は、魚の加工品なのに歯切れがきゅっと軽い。総本店は作りたてを扱い、9時から18時まで開くと知って、港町の一日が食感で締まった。
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