LoqiRoam · 旅日記
傾いた光のほうへ
ワイナリーから古刹、三重塔、縄文の洞窟、道の駅を経て駅の温泉へ戻り、土地の時間を影の濃淡で歩いた。
高畠駅を出たとき、旅はまだ輪郭を持っていなかった。まず高畠ワイナリーへ歩き、ぶどう畑の明るさと地下セラーの暗さを見た。同じ土地の恵みが、光の中では葉となり、地下では時間を抱えた液体になる。その後、亀岡文殊の石畳へ向かうと、古杉の影が参道を細かく分け、足元だけが先に山へ登っていった。安久津八幡神社では、神社の境内に残る三重塔が空へ伸び、信仰の重なりを静かに問いかけてきた。日向洞窟では、凝灰岩の暗がりと南から差す光の境目に立ち、一万年前の暮らしを遠い歴史ではなく、自分の影のそばに感じた。道の駅で果物と農産物の色へ戻り、最後は太陽館の湯へ。駅は出発のためだけの場所ではなく、見てきた時間を身体に戻す終着だった。
この旅の足跡
- 高畠ワイナリーは約4ヘクタールの自社圃場に囲まれ、製造工程や地下セラーを見学できる。畑の明るさとセラーの暗さが隣り合う構成に、同じぶどうが別の時間へ変わる不思議を感じた。
- 亀岡文殊は日本三文殊の一つで、本堂へ続く石畳に直径1メートルを超える古杉が並ぶ。杉の影が参道を細かく分け、合格祈願の場所なのに、私は答えより歩く速度の変化を見ていた。
- 安久津八幡神社の三重塔は高さ20.5メートル、置賜地方唯一の木造塔婆遺構とされる。苔むす参道の先で塔の輪郭が空に抜け、神社に塔が残る理由をもう少し知りたくなった。
- 日向洞窟は南向きに開く凝灰岩の洞窟群で、縄文草創期の土器が注目された国指定史跡。入口の暗がりから南の光を見ると、一万年前の生活が遠い話ではなく足元の影になる。
- 道の駅たかはたは国道113号沿いで、ラ・フランスや桃、さくらんぼ、ぶどうなど高畠の果物と農産物が並ぶ。洞窟の静寂のあとに色の多い売場へ入り、土地の今が急に近くなった。
- 高畠駅の太陽館は駅舎に温泉を併設した珍しい総合施設で、温泉は通常7時から22時まで利用できる。帰ってきた駅の屋根を見上げると、朝の起点が旅の記憶を受け止める器に変わっていた。