LoqiRoam · 旅日記
川の線と、宿場の看板
安部駅から八東川、安井宿、神社、老舗菓子店、古民家カフェを歩き、看板と道から町の時間を読んだ。
安部駅に降りると、黒光りする木製の切符売り場と改札がまず目に入った。駅舎と散髪屋が一緒になった造りは、観光用に整えられた景色というより、暮らしの途中に映画の記憶が残っている感じがする。そこから八東川の土手へ出ると、桜の季節なら華やぐ場所が、今日は水面と鉄橋の線だけで静かに景色を作っていた。川を渡って安井宿へ向かう道では、赤瓦の家並みと軒先の看板を追い、旧街道の幅を身体で確かめた。伊蘇乃佐只神社では、麒麟獅子舞の土地らしい祭りの気配を想像しながら、農道のような参道を歩いた。帰り道にますだ御菓子司で八東川や宿場の名を冠した菓子を見つけ、最後は古民家のkimu cafeへ。古い駅と街道だけでなく、糀を使う新しい営みも同じ町にある。看板を読む散歩は、過去を探すことではなく、時間の違う暮らしを同じ小道で見つける旅だった。
この旅の足跡
- 安部駅の木製の切符売り場と改札は今も現役で、駅舎には散髪屋さんまで一体化している。映画の舞台と聞く前から、入口の看板が物語を始めていた。
- 八東川の土手は、春なら桜並木とライトアップで華やぐ場所だが、今日は川面と鉄橋の線が主役。花の季節でなくても、列車を待つような景色が残っている。
- 安井宿では、県道沿いに赤瓦の家並みが続き、道幅の向こうに宿場町の奥行きが見える。立派な観光門より、家ごとの軒先の違いを読む方が面白かった。
- 伊蘇乃佐只神社は安井宿297番地にあり、農道のような参道の先に小さな森が現れる。麒麟獅子舞の土地なのに、境内は驚くほど静かで、祭りの音を想像した。
- ますだ御菓子司は昭和4年開業の老舗で、八東川を名にした最中や宿場まんじゅうを扱う。8時30分から18時30分まで開く看板に、川と街道が甘味で結ばれていた。
- 安部駅から618メートルのkimu cafeは、日下部750の古民家で糀を使うごはんとおやつを出す。日曜の11時から16時営業という小さなリズムまで、町の余白に感じられた。