LoqiRoam · 旅日記

影が谷を渡るころ

駅前の桜から峡谷、こけし、足湯へと進み、最後に湯の中で影の旅を閉じた。

中山平温泉の駅前で、開業のころから残る桜の影を見た。一本だけの木なのに、ホームの静けさを支える柱のようだった。そこから遊歩道へ入り、見晴らし台で線路を真上から眺める。列車を待っていたはずが、雲の影が先に谷を横切った。鳴子峡へ下りると、岩壁は思ったより近く、大谷川だけが明るく動いていた。景色の大きさに少し疲れたところで、こけしの資料館へ寄る。木を削る音や古い形の残り方を想像すると、影にも作り手の手があるように思えた。鳴子温泉駅前の足湯で歩みを休め、最後はしんとろの湯へ戻る。湯の中では、外の影を追わなくてもよかった。今日見たものは消えず、まぶたの裏でゆっくりほどけていった。

この旅の足跡

  1. 駅前に残るソメイヨシノは、開業時から町を見てきた一本だという。枝の影を追うと、無人のホームにも人の時間が重なって見えた。
  2. 約450メートルの中山平遊歩道には、線路を真上から見下ろす見晴らし台がある。列車の影を待つつもりが、先に雲の影が谷を走った。
  3. 鳴子峡では中山平口から約350メートルの遊歩道を歩ける。屏風のような岩壁の下で、大谷川だけが明るく動き、影の深さを測れなかった。
  4. 岩下こけし資料館には江戸時代の文献や製作実演があり、入館無料で8時30分から17時まで開く。木の表情を見ていると、影まで手仕事に思えた。
  5. 鳴子温泉駅前には無料の足湯があり、駅舎の正面で湯けむりを眺めながら休める。靴を脱ぐだけで、街の速度が少し遅くなった。
  6. しんとろの湯は年中無休で、温泉は9時から20時30分まで。熱い湯に沈むと、昼間ずっと追っていた影が内側へ静かに消えた。
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