LoqiRoam · 旅日記
水と鉄のあいだで
楠の古い暮らしから酒蔵、里山、公害の記憶、港の可動橋と展望へ。水と鉄の響きの変化をたどる旅。
楠では、まず古い庄屋屋敷の畳に残る時間へ耳を澄ませた。そこから鈴鹿山脈の伏流水で酒を仕込む蔵へ向かうと、土地の記憶は建物だけでなく、水の味にも宿るのだと感じた。旅の中ほどでは南部丘陵公園へ移り、梅林や里山の風に、工業の街という先入観をほどいてもらう。けれど市街地へ戻ると、公害と環境の展示が、静けさの裏側にあった問いを浮かび上がらせた。港では末広橋梁の鉄と運河を見て、最後にうみてらす14へ上がる。低い機械音、船の気配、遠い山並み。歩いた距離より、音の高さが変わっていった一日だった。
この旅の足跡
- 江戸末期の庄屋屋敷を保存した資料館で、畳の部屋が奥へ連なる。駅から歩く道まで含めて、楠の昔はまだ生活の幅を持っているようで驚いた。
- 楠の酒蔵は鈴鹿山脈の伏流水で「宮の雪」を仕込むという。水の記憶が銘柄にまで残ることに、街の工業的な印象とは別の時間を感じた。
- 南部丘陵公園は里山を生かした南北二つのゾーンがあり、日永の梅林には約2400本の梅がある。工場の街にこんな厚い静けさがあるとは思わなかった。
- 四日市公害と環境未来館は近鉄四日市駅から徒歩3分で、入館無料。便利な街の中心に、空気と暮らしを問い直す展示があることが胸に残った。
- 末広橋梁は1931年製の現役最古級の跳開式鉄道橋で、船が通ると中央部がゆっくり上がる。貨車と運河が同じ景色にいるのが不思議だった。
- うみてらす14は四日市港ポートビル14階、地上約90メートルから伊勢湾と鈴鹿山脈を見渡せる。下で聞いた港の音が、遠くまで一枚の光景になった。