LoqiRoam · 旅日記

並木の先で、音が薄くなる

飯田の並木、城下町の記憶、文化施設、蔵の休憩、森の静けさを歩いてつないだ。

桜町から歩き始めると、大宮通りの並木は季節の花だけを見せる道ではなかった。約700メートルの木々が、駅前の交通音と城下町の静けさの間に細い境目をつくっている。そこから菱田春草の生誕地公園へ入ると、武家屋敷風の塀と植物の配置が目に残った。生まれた場所を示す公園でありながら、記念碑より葉の揺れのほうが強く語りかけてくる。美術博物館では、その植物の印象が伊那谷の自然や絵画の時間へ広がった。次に人形美術館で立体の表情を見たことで、静けさは無音ではなく、物語が始まる直前の間なのだと思い直した。蔵造りのカフェでは、りんごの甘さと土地の料理で歩みをいったん止めた。最後はかざこし子どもの森公園へ向かい、街の説明から離れて木々の間に立った。旅の終わりに残ったのは名所の数ではなく、道、庭、展示、食事、森が少しずつ音を薄くしていく感覚だった。

この旅の足跡

  1. 大宮通りには約700mにわたり桜の木が続く。花の季節でなくても、並木が道を細く見せ、駅から歩き始めた街の音が少しずつほどけていくのが意外だった。
  2. 塀越しに約30種の植物を配した菱田春草生誕地公園。画家の生家跡なのに、説明より先に葉の重なりが目に入り、記念の場所が小さな庭として息づいていることに驚いた。
  3. 飯田城跡に建つ美術博物館は、伊那谷の自然と文化を扱い、菱田春草の作品も収蔵する。公園で見た植物が、今度は絵の中で別の時間を持つように感じられた。
  4. 川本喜八郎人形美術館では三国志や平家物語などの人形を見られる。静止した顔つきなのに、照明の下では次の一場面を待つ役者のようで、街の文化の厚みに気づいた。
  5. りんご並木沿いのカフェ三連蔵は、古い蔵の姿を残しながら、りんごの菓子や地元豚の料理を出している。観光の途中なのに、町の台所へ少しだけ招かれた気分になった。
  6. かざこし子どもの森公園は自然に囲まれ、開園は9時から17時。中心街の展示を見たあとに来ると、遊具のある場所でも木々の間には静かな余白があり、終着にふさわしいと思った。
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