LoqiRoam · 旅日記
水音と暮らしのあいだ
食の賑わいから庭園、商店街、漆芸、港、城跡の堀へ、音の変化をたどった。
伏石を出て、最初に向かったのは、玉切れまでの短い時間に人が集まるうどんの店だった。湯気と足音で旅の耳が起きる。そこから栗林公園へ移ると、池と松のあいだに音の隙間が生まれ、歩くことそのものが少しゆっくりになった。庭を出たあとは田町商店街のアーケードへ。買い物の声や靴音が屋根の下で丸く反響し、静けさとは違う安心があった。高松市美術館では讃岐漆芸の細部に目を預け、いったん世界の音を遠ざける。けれど旅は閉じず、北浜alleyの古倉庫と潮風へ抜けた。最後は玉藻公園の堀へ。海水を引く水面を眺めていると、食、庭、商い、手仕事、港の気配が、ひとつの長い呼吸に戻っていった。
この旅の足跡
- 伏石の南側で見つけた麺むすびは、10時30分から14時30分、玉切れまでの営業。行列が伸びる人気店らしく、出発直後から街の食欲が聞こえる気がした。
- 栗林公園は日の出から日没近くまで開き、紫雲山を背に池と松が連なる。広い庭なのに、水面の小さな揺れが近くに聞こえそうで、歩く速度が自然に落ちた。
- 田町商店街は高松中央商店街の南端にあり、東西南北へアーケードが連なる。屋根の下では足音が少し丸くなり、店先の生活音と人の流れが重なっていた。
- 高松市美術館では讃岐漆芸のコレクションや日本伝統漆芸展が紹介されている。磨かれた表面は音を返さないのに、見つめるほど道中のざわめきまで遠くなった。
- 北浜alleyは高松港近くの旧倉庫を使った海辺の複合空間で、カフェや店が集まる。古い壁の内側に潮風と食器の音が入り込み、街の終わりが少し柔らかく見えた。
- 玉藻公園は高松城跡で、瀬戸内海の水を引く堀と月見櫓、水手御門が残る。城跡なのに潮の気配が近く、最後に聞こえるのは歴史より先に水の呼吸だった。