LoqiRoam · 旅日記

堀の水から、湯の気配まで

米沢の城下町から笹野の手仕事を経て、小野川温泉の湯へ音の変化をたどった。

置賜の出発点では、まだ旅の輪郭が決まっていなかった。米沢へ向かい、まず堀の水をたたえる境内に立つと、町の歴史は大きな声ではなく、石畳と木々の間に沈んでいるようだった。庭を眺めながら郷土の食に触れ、そこから酒蔵へ歩く。古い道具や梁は、見学するものというより、米と水と人が何度も同じ動作を重ねた時間そのものに見えた。笹野では茅葺きのお堂と彫刻に出会い、木を削る手仕事へ耳を澄ます。最後は小野川温泉の足湯へ。旅の終わりに残ったのは、名所の数ではなく、水、木、湯が順番に音の表情を変えていった感覚だった。

この旅の足跡

  1. 堀の水面が社殿の輪郭を静かに返していた。上杉謙信を祀る境内は17時まで開き、観光地なのに耳を澄ます余白が残っているのが意外だった。
  2. 総ヒノキの入母屋造りと庭園を眺めながら、飢饉を越えるための「かてもの」に思いを巡らせる。食事の場が、静かな歴史資料にもなっていた。
  3. 1597年創業の酒蔵を修復した資料館に、昔の仕込道具と大きな土蔵が残る。試飲より先に、梁の下で酒造りの手順を想像したくなった。
  4. 茅葺き屋根の笹野観音堂には龍や鳳凰の精巧な彫刻がある。近くで一刀彫の里と知り、木を削る音が祈りの続きのように思えてきた。
  5. 笹野地区ではコシアブラなどの木をサルキリ一本で削る一刀彫が伝わる。小さなお鷹ぽっぽに、土地の手の動きが凝縮されている気がした。
  6. 旅館組合前の足湯は8時から21時まで利用でき、飲泉所も併設されている。最後に足を湯へ預けると、遠くまで来た実感が音より先にほどけた。
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