LoqiRoam · 旅日記

水面のない影を追って、松本の午後

川辺の商店、神社の木立、城の堀、休館中の校舎、美術館、あがたの森をつなぎ、影の濃さと意味が変わる松本の午後を歩いた。

北新・松本大学前を出たとき、旅はまだ駅のホームに置き忘れられたように静かだった。上高地線で市街地へ入り、女鳥羽川沿いの縄手通りを歩く。カエルを掲げる店々の影は軽やかで、そのすぐ脇の四柱神社では木立の暗がりが深くなる。松本城の黒い天守は堀の水にもう一度姿をつくり、北へ回った旧開智学校では、明治の華やかな装飾を閉じた門の外から眺めた。休館という事実が、建物にも見られない時間があるのだと教えてくれた。午後の後半は松本市美術館へ向かい、屋外の影を強い色彩へ反転させる。最後にあがたの森の芝生へ戻ると、枝の影がゆっくり伸びていた。名所を追ったはずなのに、残ったのは場所の名前より、光が形を変えながら歩みに寄り添ってきた感覚だった。

この旅の足跡

  1. 女鳥羽川に沿う縄手通りは、カエルをシンボルにした歩行者天国だった。店先の小さな影が川へ流れ、賑やかなのに水音だけは遠い。
  2. 四柱神社は四柱の大神を祀る社で、縄手通りのすぐ脇にある。鳥居をくぐると、通りの看板より木立の影が先に目に入り、街の奥行きが変わった。
  3. 松本城は現存する五重六階の天守で、開場は8時30分から17時。黒い外壁が堀に落とす影は、石垣の線までくっきりしていて、城が水面にもう一つ建っているようだった。
  4. 旧開智学校は明治9年築の擬洋風校舎で、松本市開智2-4-12にある。耐震対策工事による休館を知り、華やかな装飾を閉じた門の外から見ると、建物にも眠る時間があると感じた。
  5. 松本市美術館は9時から17時まで開館し、草間彌生の願いを込めた作品も紹介している。屋外の樹影を離れて強い色の空間に入ると、影は暗さではなく輪郭になった。
  6. あがたの森公園では旧制高等学校の面影と木立が隣り合う。最後に芝生へ伸びる枝の影を見ていると、今日歩いた川、堀、校舎の線が一本の長い午後にほどけていった。
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